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トピックス/コラム詳細

2021年03月19日
コラム

弁護士:久保井 聡明

久保井L⇔O通信21.2.1~1.29(株主総会ウェブ開示対象再度拡大,燃費データ改ざん売買契約取消し判決,SDGウェブセミナー,自筆証書遺言保管制度利用状況,上場会社のバーチャルオンリー総会の特例立法化)

104. 【株主総会ウェブ開示対象が再度の拡大】21.2.1
さて、新型コロナウイルスの感染が収束していないため、令和3年1月29 日,会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令(法務省令第1号) が公布され,その一部が同日から施行されました。この省令により,今年の9月30日までに招集の手続が開始される定時株主総会に限り,単体の貸借対照表や 損益計算書等がいわゆるウェブ開示によるみなし提供制度の対象に含められることとなりました。

昨年5月15日に同様の改正をした省令(令和2年法務省令第37号)が公布・ 施行されていましたが,同年11月15日の経過により効力を失っていました。 今回、コロナの状況に鑑みて、改めて同様の改正を行ったものです。下記、法務 省のHPの資料です。
http://www.moj.go.jp/content/001339858.pdf

105. 【燃費データ改ざん,売買契約取消し判決】21.2.2
さて、報道によると、21.1.29、大阪地裁は、車を購入する際、燃費のデータは環境問題への配慮の観点から売り手が説明する消費者契約法上の「重要事項」にあたり、原告ら買い主はカタログなどを唯一の情報源として改ざんデータを参考にして購入した,として、車の売買契約を取り消し、販売店に対し買い主側に計約370万円を支払うよう命じた、とのことです。なお,370万円という金額は,売買代金全額ではなく,車を利用していた期間の利用利益は差し引いた,ということのようです。

2016年に起きた三菱自動車の燃費不正問題に関連する事件のようです。地裁判決ですが今後の行方にも注目が集まりそうです。

以下、消費者契約法の関連する条文です。

【消費者契約法】
(消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し)
第四条 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次の各号に掲げる行為をしたことにより当該各号に定める誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
一 重要事項について事実と異なることを告げること。 当該告げられた内容が事実であるとの誤認

106. 【昨日のSDGsウェビナーについて】21.2.4
さて,昨日,日本CSR普及協会近畿支部が主催するSDGsウェビナーを開催したところ,120人以上の方にご参加頂き無事開催することができました。このbccを配信させて頂いている方も多くご参加頂いたようでうれしく思いました。

(2)ウェビナーの設定なども私自身がやる「羽目」になってしまい, YOUTUBEでウェビナーの設定方法を勉強しながらで不安でしたが,何とか できました。やってみるもんですね。もっと高度なウェビナー(例えば事前登録 をする,アンケート機能を使う,ウェビナーと同時並行で質疑応答をするなど) もあるようですが,これは次回以降の宿題ということにしておきます。

(3)中身的にもなかなか面白いものになったと思います。弁護士の立場から SDGsを推進している方,事業そのものがSDGsと密接な会社の取締役, ESG投資などを手掛ける機関投資家の3名からのお話しでした。

(4)全く異なる立場からでしたが,弁護士→「今後はキレイ事でないと会社が 成り立たない時代に」,会社取締役→「ビジネスとチャリティーを同時に回 す」,機関投資家→「財務価値と社会価値の共通点を見つける」と,事前打合せ はしていなかったにもかかわらず,同じ方向の発言があったことが印象的でした。

(5)また,参加された方でご感想などがあれば,個別にメールを頂ければ,今 後の活動の参考になりますので,よろしくお願いします。

107. 【自筆証書遺言保管制度の利用状況等】21.2.5
さて,自筆証書遺言を法務局で保管する制度が,令和2年7月10日から 施行されていますが,同年12月28日現在,全国で1万2631件の申請がす でにあった,ということです。下記,法務省のHPです。
http://www.moj.go.jp/content/001327091.pdf

(2)また,本年(令和3年)4月から死亡治通知制度の運用も開始される,と いうことです。(以下の記述は法務省のHPを抜粋などしています。)

(3)自筆証書遺言保管制度では,保管の申請がされた遺言書を長期間,法務局 が預かることになりますが,遺言者の死後,相続人や遺言書に記載されている受 遺者,遺言執行者(=「関係相続人等」)が,その遺言書の閲覧や遺言書情報証 明書の取得を行い,最終的には遺言の内容を知ることが重要になります。

(4)そこで,遺言書保管所から,関係相続人等に対して,遺言書が遺言書保管所に保管されていることをお知らせする「通知」という仕組みを設けられています。通知には,①「関係遺言書保管通知」と②「死亡時の通知」の2種類があります。

①関係遺言書保管通知とは
 この通知は,遺言書保管所に保管されている遺言書について,遺言者の死亡後,関係相続人等が,(1)その遺言書を閲覧したり,(2)遺言書情報証明書の交付 (以下合わせて「閲覧等」)を受けたときに,遺言書保管官が,その他の関係相 続人等に対して,遺言書保管所に遺言書が保管されている旨を通知するというも のです。これにより,その他の全ての関係相続人等に遺言書が保管されているこ とが伝わることとなります。ただし,関係相続人等のうちのいずれかの方が,閲 覧等をしなければ,仮に相続が開始した(遺言者が死亡した)としても,この通 知は実施されません。

②死亡時の通知とは
 そこで,関係遺言書保管通知を補うものとして,遺言者の死亡の事実を把握 することが可能となる仕組みによって,遺言書保管官が遺言者の死亡の事実を確 認した場合には,あらかじめ遺言者が指定した者に対して,遺言書が保管されて いる旨を通知することとされました。この死亡時の通知については,令和3年度 以降頃から本格的に運用を開始することとしています。
 注意が必要なのは,この死亡時の通知は,上記①とは違って,希望する遺言者 のみについて実施することとし,遺言書の保管の申請時に,一定の様式により, 同意事項に同意し,通知対象者の指定をすることになるようです。

より詳しくは下記の法務省のHPを参照ください。
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00012.html

(5)これまでの遺言の実務に大きな変化を及ぼす改正のように思います。

108. 【上場会社のバーチャルオンリー総会の特例立法化へ】21.2.8
さて,2月5日,「産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律案」が閣議決定され,現在開会中の第204回通常国会に提出される予定,とのことです。

経済産業省のHP(下記のURL)によると,法律の趣旨は,「新型コロナウイ ルス感染症の影響、急激な人口の減少等の短期及び中長期の経済社会情勢の変化 に適切に対応して、「新たな日常」に向けた取組を先取りし、長期視点に立った企業の変革を後押しするため、ポストコロナにおける成長の源泉となる①「グリーン社会」への転換、②「デジタル化」への対応、③「新たな日常」に向けた事 業再構築、④中小企業の足腰強化等を促進するための措置を講じます。」とあり ます。

★そのなかに,1つ注目すべき改正内容が含まれており,「上場会社のバーチャルオンリー株主総会の開催を特例的に可能とします。」とあります。これまでの会社法では,少なくとも1人は実際のリアル会場で参加する必要がある,と解釈されていますが,この点の特例を認める,ということのようです。

【経産省のHP】
https://www.meti.go.jp/press/2020/02/20210205001/20210205001.html
【経産省の法律案概要】
https://www.meti.go.jp/press/2020/02/20210205001/20210205001-1.pdf