久保井L⇔O通信21.3.8~3.17(大企業で減資,空箱上場?,放送法の外資規制,不正会計調査報告書) – 久保井総合法律事務所

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トピックス/コラム詳細

2021年05月06日
コラム

弁護士:久保井 聡明

久保井L⇔O通信21.3.8~3.17(大企業で減資,空箱上場?,放送法の外資規制,不正会計調査報告書)

119. 【大企業で減資の動き】21.3.8
さて、昨日(21.3.6)の日経新聞に、近年、大企業が減資(資本金の額を減少させること)によって身の丈を縮める動きが活発、との記事がありました。

この記事によると、資本金1億円以上の企業は2011年度に約3万3千社あったのが、18年度には3万社に減った(国税庁)、とのことです。減資を行う理由について、コロナ禍で業績の低迷が続き、資本金を取り崩して損失補填をするという本来想定されているケースに加え、資本金が1億円以下の場合、税制上は中小企 業扱いで法人税の税率が低くなることや、地方税の法人事業税を赤字でも支払う 外形標準課税も対象外になるなどがある、ということもあるようです。この記事では、「経営実態とのズレが広がれば、税の公平性を欠く」と懸念を示しています。

この点、株式会社が資本金の額の減少させる手続は、会社法447条以下に手続が 定められており、株主総会の特別決議(議決権の過半数の株主が出席し,3分の2以上の多数)に加え、会社の債権者に対する事前の公告や個別催告といった債 権者保護手続が必要になります。仮に債権者が異議を述べた場合には、株式会社は、当該減資をしても当該債権者を害するおそれがない場合を除いて、当該債権者に弁済を行うか、相当な担保を提供しなければならない、とされています。

 

120. 【英国の上場ルール緩和,空箱?】21.3.10
さて、今日(21.3.10)の日経新聞朝刊に,「英、上場誘致へルール緩和種類株や「空箱」活用促す 市場の失地回復狙う」という記事が出ていました (下記URL)。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO69820620Z00C21A3EE9000/

緩和案では,「特別買収目的会社(SPAC)=「Special Purpose Acquisition Company」を上場させやすくするルールが考えられているようです。この 「SPAC」は,記事の解説によると,「自らは事業を営まず、上場で調達した資金 を使って未公開企業や他社事業の買収のみを目的とする。上場時にはどの企業を 買うのか不透明で、白紙の小切手を指すブランク・チェック・カンパニーとも呼 ばれる。」とあるように,ある意味,「裏口入学」を大っぴらに認める,という側面があります。

以前,弁護士会の民暴委員会で反社会的勢力による上場会社の乗っ取りなどを研 究した際,「ハコ企業」と言って,成績不振な上場企業の株式を買い占めて,事業の中身や役員ごと「ごろっと」変えてしまう,そのことによって,本来,上場する際の厳しい審査を潜り抜けてしまう,というケースがある,ということでした。このあたり,どう調整を付けていくか,色々課題はありそうです。

 

121. 【放送法の外資規制】21.3.15
さて、「東北新社」が放送法の外資規制に違反していた問題で、総務省は3月 12日、同社の子会社が持つ衛星放送(BS)事業者としての認定の一部を取り消すと発表しました。この点、普段はほとんど見ない法律ですが、放送法を調べてみると、次のような外資規制や、それに反した場合の認定取消しに関する条項がありますね。
【放送法】
(認定)
第九十三条 基幹放送の業務を行おうとする者(電波法の規定により当該基幹放 送の業務に用いられる特定地上基幹放送局の免許を受けようとする者又は受けた者を除く。)は、次に掲げる要件のいずれにも該当することについて、総務大臣の認定を受けなければならない。
(中略)
七 当該業務を行おうとする者が次のイからルまで(衛星基幹放送又は移動受信 用地上基幹放送の業務を行おうとする場合にあつては、ホを除く。)のいずれにも該当しないこと。
イ 日本の国籍を有しない人
ロ 外国政府又はその代表者
ハ 外国の法人又は団体
ニ 法人又は団体であつて、イからハまでに掲げる者が特定役員であるもの又はこれらの者がその議決権の五分の一以上を占めるもの
ホ 法人又は団体であつて、(1)に掲げる者により直接に占められる議決権の割合とこれらの者により(2)に掲げる者を通じて間接に占められる議決権の割合として総務省令で定める割合とを合計した割合がその議決権の五分の一以上を占めるもの(ニに該当する場合を除く。)
(1) イからハまでに掲げる者
(2) (1)に掲げる者により直接に占められる議決権の割合が総務省令で定める割合以上である法人又は団体
(後略)

(認定の取消し等)
第百三条 総務大臣は、認定基幹放送事業者が第九十三条第一項第七号(トを除く。)に掲げる要件に該当しないこととなつたとき、又は認定基幹放送事業者が行う地上基幹放送の業務に用いられる基幹放送局の免許がその効力を失つたときは、その認定を取り消さなければならない。
2 (略)
第百四条 総務大臣は、認定基幹放送事業者が次の各号のいずれかに該当するときは、その認定を取り消すことができる。
一 正当な理由がないのに、基幹放送の業務を引き続き六月以上休止したとき。
二 不正な手段により、第九十三条第一項の認定、第九十六条第一項の認定の更新又は第九十七条第一項の許可を受けたとき。
(後略)

 

122. 【不正会計事件の調査報告書】21.3.17
さて、シャープが、21.3.12、子会社の不正会計事件について、外部の弁護士らによる調査報告書を公表しました(末尾のURLはシャープのHP)。この子会社の2020年3月期までの2年間の売上高のうち4割にあたる約92億円が不適切に計上されていた、ということです。不正会計の手法としては、具体的な納入先への販売が決まっていない段階での売り上げ計上や注文なしの売り上げ計上、帳簿上は価値のない在庫品を販売後に買い戻す循環取引があったと認定されているようです。

不正会計事件の場合、①不正の動機、②不正を行うことができた機会、③不正を行うことについての正当化、に分けて分析・検討されることが多いですが、下記の調査報告書でも41頁以下からこの3つの観点から詳細に分析されています。

コロナ禍で監査の目が行き届かなくなり不正会計のリスクが高くなっているのではないか、と言われていますが、他山の石として参考になる事例に感じます。

https://corporate.jp.sharp/ir/pdf/2021/210312-2.pdf