久保井L⇔O通信21.3.18~3.24(同性婚不可違憲判決,東芝総会,LINEと個人情報保護法①②) – 久保井総合法律事務所

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トピックス/コラム詳細

2021年05月06日
コラム

弁護士:久保井 聡明

久保井L⇔O通信21.3.18~3.24(同性婚不可違憲判決,東芝総会,LINEと個人情報保護法①②)

123. 【同性婚不可の民法など違憲判決】21.3.18
さて,今朝の新聞各紙で大きく報道されていますように,昨日(21.3.17),札幌地方裁判所は,同性間の婚姻を認める規定を設けていない民法及び戸籍法の婚姻 に関する諸規定(以下,「本件規定」)は,同性愛者に対しては,婚姻によって生じる法的効果の一部ですらもこれを享受する法的手段を提供しないこととしており,立法府の裁量権の範囲を超えたものであって,その限度で憲法14条1項に違反する,との判決を下しました。他方で,両性の平等を定める憲法24条には違反しない,と判断しています。

この点,少し分かりにくいですが,憲法の14条1項,24条ではそれぞれ下記のように定められています。

【憲法】
第14条① すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

第24条 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
② 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

判決は,憲法24条1項で,婚姻は,「両性の合意」のみに基づいて成立する, と定められていること等から,異性婚について定めたものであり,同性婚につい て定めるものではないと解される,したがって,同性婚を認めない本件規定が同条に違反するとは認められない,としました。

これに対し,平等権を定める憲法14条1項については,「異性愛者と同性愛者の違いは,人の意思によって選択・変更し得ない性的指向の差異でしかなく,いかなる性的指向を有する者であっても,享有し得る法的利益に差異はないと言わなければならない。そうであるにもかかわらず,同性愛者に対しては婚姻によって生じる法的効果の一部ですらもこれを享受する法的手段が提供されていない。また,我が国及び諸外国において,同性愛者と異性愛者との間の区別を解消すべきとする要請が高まっていることは考慮すべき事情である一方,同性婚に対する否定的意見や価値観を有する国民が少なからずいることは,同性愛者に対して, 婚姻によって生じる法的効果の一部ですらもこれを享受する法的手段を提供しな いことを合理的とみるか否かの検討の場面においては,限定的に斟酌すべきものである」として,「本件規定が,同性愛者に対しては,婚姻によって生じる法的効果の一部ですらもこれを享受する法的手段を提供しないとしていることは,立法府の裁量権の範囲を超えたものであると言わざるを得ず,本件区別取扱いは,その限度で合理的根拠を欠く差別取扱いに当たると解さざるを得ない」と判断しました。

この点,判決は,上記の「婚姻によって生じる法的効果」とは,「婚姻当事者及びその家族の身分関係を形成し,戸籍によってその身分関係が公証され,その身分に応じた種々の権利義務を伴う法的地位が付与されるという,身分関係と結びついた複合的な法的効果を同時又は異時に生じさせる法律行為」としています。

かなり慎重な言い回しではありますが,同性婚を認めない民法などの本件規定を違憲と判断した今回の判決は様々な議論と影響を呼びそうです。

 

124. 【東芝臨時総会で株主提案可決】21.3.19
さて,昨日(21.3.18)の東芝の臨時株主総会で,2020年の総会の運営に問題があった,として第三者による調査を求める株主からの提案が可決された,とのことです。今後、3人の弁護士が3カ月かけて調査し、6月の定時株主総会で結果を報告する見通し,と報道されています。日経新聞では,「企業統治を巡る株主提案が可決されるのは異例だ。」と評されていますが,そのとおりですね。

この点,東芝のHPを見ると,今回の臨時総会は,①株主による招集請求(会社法297条)があり開催されたもので,②株主は,令和2年7月31日開催の定時株主総 会が公正に運営されたか否かに関して,会社法316条2項に基づき,株式会社の業務及び財産の状況を調査する者の選任を求めていた,ようです。(下記,東芝のHPに掲載されている臨時総会の招集通知のURL)。

https://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/stock/pdf/tsm2021_conv.pdf

この臨時総会について,会社,株主の双方から会社法306条1項に基づき,総会検 査役の選任の申立てがされ東京地裁が検査役を選任したようです(下記も東芝HP)。

https://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/news/20210310_1.pdf

このようにして迎えた昨日の臨時総会で,株主の求める提案が原案とおり可決されました(なお,別途,株主が出していた定款変更議案は否決,下記も東芝のHP)。

https://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/news/20210318_1.pdf

野次馬的に見ると,なんだか経済小説を読んでいるような展開です。下記,関連する会社法の条文です。

【会社法】
(株主による招集の請求)
第297条 総株主の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主は、取締役に対し、株主総会の目的である事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限 る。)及び招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができる。

(株主総会に提出された資料等の調査)
第316条 
(1項は略)
2 第二百九十七条の規定により招集された株主総会においては、その決議に よって、株式会社の業務及び財産の状況を調査する者を選任することができる。

(株主総会の招集手続等に関する検査役の選任)
第306条 株式会社又は総株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の百分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主は、株主総会に係る招集の手続及び決議の方法を調査させるため、当該株主総会に先立ち、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをすることができる。

 

125. 【LINEと個人情報保護法】21.3.22
さて、LINEの個人情報が利用者への具体的な説明が不十分なまま、中国の関連企業からアクセスできる状態にあった問題で、個人情報保護委員会が個人情報保護法に基づいて報告を求める、とのことです。以前から色々取り沙汰されていた問題ですが、行政や自治体もコロナ対応なども含めて色々LINEを活 用していたため、影響が大きくありそうです。

(2)この点、外国企業への個人情報の第三者提供に関する個人情報保護法のルールや、個人情報保護委員会が報告を求める根拠条文は下記です。

【個人情報保護法】
(外国にある第三者への提供の制限)
第24条 個人情報取扱事業者は、外国(本邦の域外にある国又は地域をいう。 以下同じ。)(個人の権利利益を保護する上で我が国と同等の水準にあると認められる個人情報の保護に関する制度を有している外国として個人情報保護委員会規則で定めるものを除く。以下この条において同じ。)にある第三者(個人データの取扱いについてこの節の規定により個人情報取扱事業者が講ずべきこととされている措置に相当する措置を継続的に講ずるために必要なものとして個人情報保護委員会規則で定める基準に適合する体制を整備している者を除く。以下この条において同じ。)に個人データを提供する場合には、前条第一項各号に掲げる場合を除くほか、あらかじめ外国にある第三者への提供を認める旨の本人の同意 を得なければならない。この場合においては、同条の規定は、適用しない。

(報告及び立入検査)
第40条 個人情報保護委員会は、前二節及びこの節の規定の施行に必要な限度において、個人情報取扱事業者又は匿名加工情報取扱事業者(以下「個人情報取 扱事業者等」という。)に対し、個人情報又は匿名加工情報(以下「個人情報 等」という。)の取扱いに関し、必要な報告若しくは資料の提出を求め、又はその職員に、当該個人情報取扱事業者等の事務所その他必要な場所に立ち入らせ、個人情報等の取扱いに関し質問させ、若しくは帳簿書類その他の物件を検査させることができる。

(3)少し補足しますと,今回,LINEは中国企業に業務を委託していたようで, そのなかで個人情報を中国企業が閲覧できる状態にあったのでは,と言われています。

この点,個人情報取扱事業者が,利用目的達成に必要な範囲内において個人デー タの取扱いを委託することに伴って当該個人データを提供する場合には,個人 データの第三者提供にあたらず(個人情報保護法23条5項1号),きちんと委託先の監督(同法22条)をすることを前提に,許されています。典型的には名簿の整理なんかを委託するケースですね。

しかしながら,外国にある第三者が委託先の場合,委託先の監督というのも容易ではないということで,このルールが一定の例外を除いて適用されないことと なっています。上記の個人情報保護法24条の最後に,「この場合においては, 同条(=23条)の規定は,適用しない」とされているのは,そのような意味があります。

ちょっとややこしい条文構造になっていますね。

126. 【LINEと個人情報保護法②】21.3.24
さて、前回,LINEと個人情報保護法を配信しましたが,昨日,LINEが記者会見して,「法的にどうこうではなく、ユーザーへの配慮がなかった」というような見解を示した,という報道がされています。

(2)個人情報保護法違反がなかった,という見解であれば,外国企業(中国企業)への個人情報の第三者提供について同意を得ていた,という見解なんだろうと思います。利用規約やプライバシーポリシーに対する同意を利用者にして頂いており,法的には問題ない,ということなんでしょうね。

(3)この点,私もLINEを利用していますので,アプリでプライバシーポリシーを見てみると,下記の●のような記載がありました。ここでは,「第三国」 とあり,中国と明記していません。またデータを韓国においているということも,読み取りにくい感じです。このあたりが,配慮がなかった,というコメントになるのでしょうか。

(4)なお,2022年6月12日までに施行される改正個人情報保護法では,外国にある第三者に個人データを提供するにあたっては,移転先国の名称を明記することが義務付けられることになっています(改正法24条2項)

【LINEのプライバシーポリシー抜粋】

●パーソナルデータの提供

当社は、お客様から同意を得た場合または適用法で認められる場合を除き、パーソナルデータを第三者に提供、公開または共有することはありません。
当社は、お客様から同意を得た場合または適用法で認められる場合、お客様のお住まいの国や地域と同等のデータ保護法制を持たない第三国にパーソナルデータを移転することがあります。
(中略)
なお、当社は、パーソナルデータの提供にあたり、お客様のお住まいの国または地域と同等の個人データ保護法制を持たない第三国にパーソナルデータを移転する場合があります(2019年1月23日現在、欧州委員会は、日本がパーソナルデータについて十分な保護水準を確保していると決定しています。)。この場合、当社はお客様の国または地域で承認されたデータ保護に係る標準契約やその他手段を採用し、パーソナルデータの第三国移転を適用法の要件に従って行います。

●パーソナルデータの保管場所

当社は、信頼性が高く、責任ある方法で当社サービスを提供するため、主要なパーソナルデータの保管を、当社の所在する日本の安全なサーバーで行っています。日本におけるデータ保護の水準が、お客様がお住まいの国または地域の法令 の要求水準に達しない場合があり得ます。そのような場合には、当社は適用法に従って、日本にある当社のサーバーに適法にパーソナルデータの移転が行われるようにします。なお、2019年1月23日現在、欧州委員会は、日本がパーソナルデータについて十分な保護水準を確保していると決定しています。