久保井L⇔O通信22.8.2-8.22(マンション管理適正化法検査結果概要,9月1日施行会社法の通達,戦争損害と国家賠償) – 久保井総合法律事務所

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トピックス/コラム詳細

2022年09月01日
コラム

弁護士:久保井 聡明

久保井L⇔O通信22.8.2-8.22(マンション管理適正化法検査結果概要,9月1日施行会社法の通達,戦争損害と国家賠償)

219. 【マンション管理適正化法の検査結果概要公表】22.8.2
さて,マンションの管理の適正化の推進に関する法律(以下「適正化法」)が平成13年8月に施行され20年以上が経過しています。この点,国交省によると,令和3年度末現在で,マンション管理業者の登録数が1934社,マンションのストック戸数が約675万戸に達しており,登録業者が適正化法に基づき適正にマンション管理業を営むことは,極めて重要です。このような観点から,国交省は,平成17年度以降,各地方整備局等において,マンション管理業者への全国一斉立入検査を実施しています。令和3年度においても,マンション管理業者の事務所等へ立ち入り検査,是正指導等が行われ,その概要が公表されました。

 

(2)公表内容は国交省のHPの下記URLです。

https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001492762.pdf

 

上記資料によると,結果の概要は次のとおりです。
①全国84社のマンション管理業者へ立入検査を実施し,うち19社に是正指導
②適正化法の条項ごとの是正指導社数(重複該当あり)は下記のとおり
【適正化法条項】 【是正指導社数】
① 管理業務主任者の設置(第56条関係) 3社(令和2年度 2社)
② 重要事項の説明等(第72条関係) 10社(令和2年度18社)
③ 契約の成立時の書面の交付(第73条関係) 8社(令和2年度 9社)
④ 財産の分別管理(第76条関係) 6社(令和2年度 6社)
⑤ 管理事務の報告(第77条関係) 6社(令和2年度 6社)

 

(3)マンションの老朽化もこれから更に進んでいくなか,マンション管理業者の重要性はますます高まっていくと思われ,適正化法の遵守が求められるところです。

 

 

 

220. 【9月1日施行の改正会社法‐株主総会参考書類等の電子提供措置に関する通達】22.8.8
さて,令和元年会社法改正のうち,令和4年9月1日施行部分(①株主総会参考書類等の電子提供措置の採用と登記,②支店の所在地における登記の廃止)に関する通達が公表されました(下記のURL)。以下,ポイントをかいつまんでご紹介します。
https://www.moj.go.jp/content/001378147.pdf

 

(2)株主総会参考書類等の電子提供措置の採用と登記について

電子提供措置の制度とは,株式会社(特例有限会社を含む)の取締役が株主総会資料の内容である情報を自社のホームページ等のウェブサイトに掲載し,株主に対して当該ウェブサイトのアドレス等を株主総会の招集の通知に記載等して通知した場合には,株主の個別の承諾を得ていないときであっても,株主に対して株主総会参考書類等を適法に提供したものとする制度です。

上場会社は,施行日(令和4年9月1日)において振替株式を発行している会社に該当するため,施行日をその定款の変更の効力が生ずる日とする電子提供措置をとる旨の定款の定めを設ける定款の変更の決議をしたものとみなすとされていますが,当該会社は,施行日より前にあらかじめ電子提供措置をとる旨の定款の定めを設ける定款の変更に係る株主総会の決議をした場合も含めて,施行日から6か月以内に,その本店の所在地において,電子提供措置をとる旨の定款の定めの設定による変更の登記をしなければなりません(整備法第10条第4項)。

なお,当該会社は,施行日から上記電子提供措置をとる旨の定款の定めの設定による変更の登記をするまでに他の登記をするときは,当該他の登記と同時に,電子提供措置をとる旨の定款の定めの設定による変更の登記をしなければならないとされています(整備法第10条第5項)。また,施行日から上記電子提供措置をとる旨の定款の定めの設定による変更の登記をするまでに電子提供措置をとる旨の定款の定めに変更を生じたときは,遅滞なく,当該変更に係る登記と同時に,変更前の事項の登記をしなければならないとされています(整備法第10条 第6項)。したがって,この場合には,電子提供措置をとる旨の定款の定めの設 定による変更の登記の申請は,電子提供措置をとる旨の定款の定めの廃止による変更の登記の申請と同時でなければ却下するものとする,とのことです。

 

(3)支店の所在地における登記の廃止

支店の所在地における登記義務を負う会社の負担軽減等の観点から,会社の支店の所在地における登記が廃止されました( 旧法第930条から第932条まで)。これに伴い,商登法においても,支店の所在地における登記に関する規定(旧商登法第17条第3項,第48条から第50条まで,第138条)が削除されました。したがって,施行日以後に,旧商登法第48条の規定による支店の所在地における登記の申請がされた場合は,当該申請は却下されます(商登法第24条第2号)。また,登記官は,改正省令の施行の際現にされている会社の支店の所在地における登記の登記記録を閉鎖しなければならないこととされました(改正省令附則第2項及び第3項)。

 

 

 

221. 【戦争損害と国家賠償】22.8.22
さて,1945年(昭和20年)の終戦から77年(※今朝の新聞を見ていると,1868年の明治政府から1945年の終戦までが77年,そこから77年が現在,とありましたが,そう考えると,なかなかの年月です),今年もお盆期間中にテレビなどで様々な戦争特番が放映されていました。ロシアによるウクライナ侵攻が泥沼化しつつある現在,改めて戦争の恐ろしさ,悲惨さと,平和の尊さを実感します。

 

(2)さて,ひとたび戦争が起こってしまうと,国民は生命・身体・財産に多大な損害を受けてしまいますが,国民はそういった場合,国に対して損失補償や損害賠償を求めることができるのでしょうか。

この点,政府がポツダム宣言の受諾,平和条約締結により日本国が連合国に対する賠償義務を承認し,本来ならば私有財産不可侵の原則により原所有者(個々の国民)に返還されるべき在外資産(※海外で持っていた私有財産のこと)を右賠償に充当することに対して国として何ら異議を唱えることなくこれを承認したことは,国が戦争損害の賠償義務履行という公共の目的のために自らこれを処分したのと結果において何ら異なるところがない,したがつて,国は,在外資産を喪 失させられた国民に対し,憲法29条3項の規定の趣旨に照らし,正当な補償をなすべき責務がある,として補償を求めた訴訟がありました。

 

(3)これに対して最高裁判所は,「このような戦争損害は,他の種々の戦争損害と同様,多かれ少なかれ,国民のひとしく堪え忍ばなければならないやむを得ない犠牲なのであつて,その補償のごときは,さきに説示したように,憲法29条 3項の全く予想しないところで,同条項の適用の余地のない問題といわなければならない。したがつて,これら在外資産の喪失による損害に対し,国が,政策的に何らかの配慮をするかどうかは別問題として,憲法29条3項を適用してその補償を求める所論主張は,その前提を欠く」(昭和43年11月27日大法廷判決)として上告棄却をしました。

 

(5)最高裁判所のこの考え方は,いわゆる「戦争損害受忍論」と呼ばれており,たとえば,空襲により被害を受けた方が国家賠償を求めた裁判や,私が以前に弁護団の一員として関与していた中国残留孤児国家賠償請求訴訟でも,国はこの大法廷判決を「金科玉条」のようにして引用し,そもそも前提を欠く裁判だ,と主張してきます。

 

(6)残留孤児訴訟をやっていた時,一方で軍人のご遺族に対しては恩給が手厚く支給されているのに,一般人は,「国民のひとしく堪え忍ばなければならないやむを得ない犠牲」と言われても到底納得できないな,と感じていました。いずれにしろ,戦争は始まってしまったら止めるのはもの凄く難しい,多くの人の命も奪われてしまう,戦争にならないよう,政治はあらゆる外交的努力をしなければいけないし,私たち国民も一時的な感情に流されないよう冷静に政治を監視しなければ,と思います。