中小企業再生と弁護士 – 久保井総合法律事務所

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2014年02月21日
コラム

弁護士:上田 純

中小企業再生と弁護士

経営が順調でない中小企業にとって,経営改善・事業再生による企業再生が必要です。
 経営改善のみで再生が図れない企業においては,事業の持続可能性を前提に,私的整理を試みた上で,それが難しい場合には民事再生等の法的整理に進むのが通常です。ここで言う私的整理とは、裁判所の関与がなく,金融機関のみを対象に,リスケ(返済条件の変更)やDDS・DES,債権放棄等を求める手続(中小企業再生支援協議会,地域経済活性化支援機構等の機関を利用する場合と,こうした機関を利用せず任意の交渉・バンクミーティングを行う場合があります)を指し,金融機関全員の同意が必要です。法的整理とは,民事再生等の法的倒産手続を指し,裁判所の関与があり,取引債権者も含む全債権者の負担(債権カット)を内容とする計画案の採否が多数決で決まります。
 後者の法的整理では弁護士が必ず関与しますが,前者の私的整理では弁護士が関与する事例が必ずしも多くありません。これは,私的整理段階では,コンサルや税理士・会計士・中小企業診断士等の支援を受けて,中小企業の社長・役員・経理責任者等が自ら金融機関との交渉やバンクミーティング(債権者会議)を行っているからのようです。
 しかし,中小企業にとって,私的整理においても弁護士が関与するメリットは多いと思われます。まず,①金融機関とのリスケ等の交渉ですが,弁護士以外の専門家は法律上行うことができず,弁護士の専門性が特に発揮されます。また,②経営不振の企業では様々な法律問題が生じている場合が多い上,事業計画に応じた法律問題(工場等閉鎖に伴う労働問題,事業譲渡・会社分割等における会社法や詐害行為取消の問題,海外事業撤退・縮小に伴う各国の法律問題など)もありますので,弁護士により有用な法的助言が得られ,円滑適切な処理がなされます。さらに,③破産や民事再生等の法的倒産の経験・法律知識に基づき,私的整理が成功しなかった場合の見通しを的確に説明でき,法的倒産となった場合の各金融機関の回収見込(担保等の有効性や税金等との優劣等の法的判断が必要)を踏まえた提案・交渉が可能となります。加えて,④近時,弁護士会・裁判所・中小企業庁等との協議により,弁護士代理を前提とする特定調停スキームの運用も始まりました。これは,私的整理と法的整理の中間的な手続で,非公開により信用低下リスクが少ない一方で,民事執行の停止等も可能な手続です。
 そこで,企業再生・私的整理をしようとする場合,税理士(税務面)・会計士(財務面)・中小企業診断士(事業面)等に加えて,法律・交渉の専門家である弁護士にも依頼をして,複数の専門家の協力体制のもとで手続を進められるのが最適と思われます。
 当事務所も,企業再生・私的整理の経験を有し,また,海外研修により海外案件の経験を有する弁護士や,中小企業診断士の経験を有する弁護士も擁しておりますので,お気軽にご相談下さい。