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2013年02月09日
会社法関係

弁護士 : 久保井 聡明

「置くことが相当でない理由」とは?―会社法改正要綱(社外取締役選任)から

  のっけから分かりにくい表題で恐縮ですが,これは会社法改正について議論を続けてきた法制審議会(会社法制部会)が,平成24年9月7日に決定した「会社法制の見直しに関する要綱」(以下「要綱」と言います。)に出てくる言葉です。
 新聞などでも盛んに報道されてきましたが,今回の会社法制の見直しで最も注目されていたのは,監査役会設置会社を採用している上場会社などについて,社外取締役の選任を会社法上で義務付けるかどうか,でした。結局は皆さまもご承知のとおり,経済界の強い反対もあり要綱で義務付けはされませんでした。ただ要綱ではこの点に関連して重要な記載が2点あります。
 1つは,監査役会設置会社のうち,公開会社であり,かつ,大会社で,金商法上,有価証券報告書を提出しなければならない株式会社(大部分の上場会社がこれに該当します。)において,社外取締役が存しない場合には,社外取締役を「置くことが相当でない理由」を事業報告の内容とするものとする,とされたことです。冒頭の分かりにくい表題はこの記載を引用したものです。要綱を解説した法律雑誌などによると,英国をはじめとするヨーロッパ諸国で採用される「comply or explain」(応諾か釈明か)の考え方を採用したもので,法律によって強制するものではなく,会社の自由な選択の余地を残しつつ一定の説明義務を課すことで制度目的を実現しようとの理念に基づくもの,ということのようです。
 もう1つは,要綱の附帯決議として,社外取締役に関する規律については,金融商品取引所の規則において,上場会社は「取締役である独立役員を1人以上確保するよう努める旨の規律を設ける必要がある」とされたことです。前記の開示規制と,金融商品取引所規則というソフトローの車の両輪で社外取締役の選任が推進されることが期待されている,と理解されます。すでに東京証券取引所は,平成24年8月1日付で(これは要綱の案が会社法制部会で正式決定されたのと同じ日),上場会社に対し「独立した社外取締役の確保のお願い」という通知を発出しています。
 そこで問題となるのは,今後,会社法が改正された場合,社外取締役が存しない上場会社が,一体どのような記載を事業報告の内容とすれば「社外取締役を置くことが相当でない理由」を適切に開示したこととなるか,です。この点,法制審議会の議論のなかでは,もともと「社外取締役を置かない場合はその理由を開示する」という案で審議されていましたが,上場会社については,そのような開示はすでに制度的に行われているが必ずしも適切な開示がなされていないという指摘があり,今回の要綱の表現となりました。日本語の語感からしても,「置くことが相当でない理由」は,「社外取締役をわが社に置くと~という弊害があるので適切でない」というようなことが要求されているように感じられます。少なくともこれまでのように,「適切な人材がいない」であるとか,「必要性や問題を感じたことがない」などの開示では,株主の納得が得られないのではないか,と考えられます。昨今の国会情勢などからすれば,実際に会社法が改正され施行されるのは,周知期間なども考えれば早くとも平成26年4月以降ではないか,と言われており,まだ相当時間があります。今後の議論の行方に注目が必要です。
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