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2023年04月03日
コラム

弁護士:久保井 聡明

久保井L⇔O通信23.3.20(TOB17年ぶり見直しへ)

249. 【TOB 17年ぶり見直しへ】23.3.20
さて、日経新聞(2023.3.2)に、「企業のM&A(買収・合併)で買い手に情報開示などを義務付ける「TOB(株式公開買い付け)制度」を見直す議論が17年ぶりに始まる。金融審議会(首相の諮問機関)は2日に総会を開き、1年程度で見直し案をまとめる。」との記事がありました。下記、金融審議会の資料のURLです。

https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/soukai/siryou/20230302/1.pdf

 

(2)現在のTOB規制は市場「外」取引で株式の保有割合が3分の1を超える場合が対象で、市場「内」取引は対象外となっています。このためもあってか、近時、経営陣や一般の株主が気付かないまま、市場「内」での株式取得で買収側の保有比率が一気に高まったケースも出てきました(ステルス買収)。このようなケースでは、TOB規制が適用されないため、買収後の経営計画が明示されないまま市場内で急速に株式を買い集められることになり、一般株主は適切なタイミングで株を売ることができない弊害がある、と言われています。そこで、今後、市場「内」取引もTOB規制の対象にすることが検討されるようです。

 

(3)これから株主総会シーズンを迎えますが、TOB規制に関連する議案として、敵対的買収防衛策に関する議案があげられます。すでに過去の株主総会決議で買収防衛策を導入している会社も、多くは時限措置ですので、例えば3年に1回、防衛策を継続する議案を総会に提出するのか、それとも提出せず廃止にするのか、決断に迫られます。

 

(4)この点に関連して、「敵対的買収防衛策の導入状況とその動向-2022年6月総会を踏まえて」(商事法務2022.11.5号・39頁~、三井住友信託銀行の方々著)によると、次のような傾向とのことです。この6月総会で各社がどのように判断していくのか、注目です。

 

ア 新規導入・継続・廃止の状況
2022年7月末までの1年間で、①新規導入13社(うち6社は具体的な買収者が登場してから導入される防衛策で当該買収者のみを対象とする有事防衛型)、②有効期間満了を迎えた95社のうち継続・更新78社(82.1%)、廃止または非継続17社(17.9%)。この結果、2022年7月末時点で買収防衛策保有会社266社(上場企業全体の6.9%)。廃止した17社のうち自主廃止が14社で、うち国内・海外機関投資家保有比率40%超の会社が6社

イ 継続された買収防衛策78社の内容に関する特徴
●有事における株主総会意思確認の仕組み有63社(80.8%)
●情報提供期間定め有29社(37.2%)
●評価・検討期間最長①90日超120日以内39社(50%)、②最長90日以内22社(28.2%)、③120日超(上限明記無し含む、17社(21.8%))
●第三者委員会構成で社外取締役を構成員67社(85.9%)

ウ 買収防衛策議案への議決権行使動向
2022年7月までの1年間で買収防衛策議案を付議した85社の賛成率76.8%で3年間より0.6%上昇