日弁連の第三者委員会ガイドラインをご存知ですか? – 久保井総合法律事務所

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2011年12月18日
コラム

弁護士:久保井 聡明

日弁連の第三者委員会ガイドラインをご存知ですか?

最近,企業で会計不正などの不祥事が発生した場合,外部有識者を構成メンバーとする第三者委員会が設置されるケースが増えています。第三者委員会のメンバーには,弁護士や公認会計士,学者などが選任され,比較的短期間に事実関係の調査を行い,法律上や会計上の問題点を明らかにし企業のホームページ等で公表されます。これは,外部有識者に調査をしてもらい,これを公表することにより株主,一般投資家,取引先,従業員などに対する説明責任を果たすとともに,同じような不祥事が発生しないよう再発防止策を確立することに目的があります。

 この第三者委員会について,昨年(平成22年)7月,日弁連が「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」を策定したことをご存知でしょうか。平成23年1月31日付の日本経済新聞に,同ガイドラインを知っているかどうかの企業アンケートの結果が掲載されていましたが,「内容を含めて知っている」と答えた企業が7割に上り,一定の浸透がうかがえます。

 ところで,なぜこのようなガイドラインが作られたのか,日弁連ガイドラインの前文には次のような文章があります。

「第三者委員会が設置される場合,弁護士がその主要なメンバーとなるのが通例である。しかし,第三者委員会の仕事は,真の依頼者が名目上の依頼者の背後にあるステーク・ホルダーであることや,標準的な監査手法であるリスク・アプローチに基づいて不祥事の背景にあるリスクを分析する必要があることなどから,従来の弁護士業務と異質な面も多く,担当する弁護士が不慣れなことと相まって,調査の手法がまちまちになっているのが現状である。そのため,企業等の側から,言われなき反発を受けたり,逆に,信憑性の高い報告書を期待していた外部のステーク・ホルダーや監督官庁などから,失望と叱責を受ける場合も見受けられるようになっている」

 これは,弁護士にとっては耳の痛い話です。弁護士が中心となった第三者委員会が,当初から企業に対して「免罪符」を与えることを目的としていたのではないか,と疑われるケースもなくはありません。現在,世間を大きく賑わせている日本相撲協会にも外部有識者による委員会が設置されていますが,すでに1度,暴力団等の反社会的勢力との関係を調査し膿は出し切った,これで問題なし,として再出発したはずであるにも拘わらず,八百長問題という大問題が出てきました。万が一,この八百長問題が暴力団等の闇の世界との関係まであったとなると,最初の調査は何だったのか,ということになりかねません。これからの弁護士業務は単に,依頼者の表面上の利益を最大化するだけではなく,依頼者の究極的な利益は何か,ということを常に意識しながら進めていくことが必要である,と考えさせられます。

 なお,日弁連の第三者委員会ガイドラインは,日弁連のホームページに掲載されていますし,「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」などの用語で、インターネットで検索すればすぐにヒットしますので,興味のある方はご覧いただければと思います。

(記:平成23年春)