公序良俗違反のおそれによる商標不登録 – 久保井総合法律事務所

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2014年03月03日
コラム

弁護士:松本 智子

公序良俗違反のおそれによる商標不登録

昨年、富士山が世界文化遺産に登録されたのは、記憶に新しいところです。
 この富士山の世界遺産登録に関連して、一私人が、「富士山世界文化遺産センター」の文字商標を、「建物の管理、建物賃貸の代理又は媒介等」のサービスについて登録出願していたのに対し、知財高裁で登録拒絶とする判決が出されました(H24.10.30知財高裁H24(行ケ)10120)。
 商標として保護を受けるためには、特許庁への商標登録が必要ですが、その登録要件は、自他識別力(商標法3条)のほか、商標法4条1項各号記載の不登録事由に該当しないことが要件とされており、商標法4条1項7号では、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」を不登録事由としています。
 本件で知財高裁は、日本の他の世界遺産では、国または地方公共団体によって、「○○世界遺産センター」との名称の施設が設置され、世界遺産の保全・管理・情報提供等の活動拠点として運営されていること、富士山についても同様の動きがあることを認定し、一私人に上記商標登録を認めれば、国または地方公共団体等の施策の遂行を阻害するおそれがあることに加え、これらの施策は高度の社会公共性があることに鑑み、「公序良俗違反のおそれがある商標」と判断しました。
 本件は富士山が世界遺産登録される前に争われていたため、公序良俗違反の判断になりましたが、富士山が登録された以後に争われた場合には、商標法4条1項6号「国または地方公共団体の非営利目的の著名商標と同一または類似の商標」の不登録事由に該当すると判断された可能性もあった事案ではないかと考えられます。
 近年、周知著名となっている商標を、関係ない第三者が商標登録しようとする問題が発生しています。日本においては、商標法4条1項10号・15号・19号などの不登録事由がありますが、公序良俗違反による不登録の主張をすることも考えられます。
 近年、商標法4条1項7号についての裁判例がいくつか出てきているので、注目していきたいと考えています。