電子書籍に対応した著作権法の改正(出版物の違法アップロード対策) – 久保井総合法律事務所

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2015年02月25日
コラム

弁護士:松本 智子

電子書籍に対応した著作権法の改正(出版物の違法アップロード対策)

平成26年4月から大阪弁護士会知的財産委員会の副委員長をしております。
 近年、デジタル化・ネットワーク化、経済のグローバル化に伴い、知的財産権の分野でも、インターネット上での知的財産権の侵害が、年々増加傾向にあります。
 音楽や映像について許諾を得ずに複製しインターネット上に違法にアップロード・ファイルを共有して配信することは以前から違法でしたが、これらを個人的な利用のためにダウンロードすることについても違法とする著作権法の改正が平成22年1月から施行され、その後罰則も設けられたことは記憶に新しいところです。
 平成26年の著作権法改正では、出版物について、違法に複製されインターネット上にアップロードされる被害が増加していることに対応し、電子書籍に対応した出版権の整備を行い、個々の作家・漫画家だけでなく、電子書籍出版権の設定を受けた出版社が、出版物の違法アップロードを差し止めることができる改正が行われました。
 著作権法80条1項では、出版権は紙媒体による出版のみが対象となっていましたが、時代の変化に追いつき、CD-ROM出版やインターネット配信による電子出版の規定が設けられました。特に興味深いところは、出版権者の出版義務(著作権法81条 原稿引渡しから6月以内)を電子書籍についても維持しながら、電子書籍出版権の設定契約で別段の定めをした場合は、それが優先されるとされているところです。全ての作家・漫画家が紙媒体の出版物とともに、すぐに電子書籍を出版することを望むわけではないので、紙媒体の出版権とともに電子書籍の出版権設定をしたうえで、電子書籍の出版時期を柔軟にできる規定を置くことで、当面紙媒体だけを出版する場合にも、それが違法にアップロードされた場合には、出版社が差止めを行うことができるようになり、出版物の違法アップロード対策が取りやすくなります。
 この著作権法の改正以外に、昨年は、新しい特許異議申立制度を定めた特許法の改正、複数国に意匠を一括出願するためのハーグ協定を実現するための意匠法の改正、地域団体商標の登録主体の拡充、色彩のみ・音・動き・ホログラム・位置などの新しい商標などの登録を可能にする商標法の改正がありました。このうち新しい商標に関しては本年4月乃至5月に施行される予定のようです。具体的にどのような登録がなされていくのか、大変興味深いところです。また、今後も、営業秘密管理指針の改訂、特許職務発明制度の改正などが予定されており、目が離せません。