秘密情報の管理・流出防止~営業秘密管理指針の改正~ – 久保井総合法律事務所

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2016年04月18日
コラム

弁護士:松本 智子

秘密情報の管理・流出防止~営業秘密管理指針の改正~

産業スパイ事件や顧客情報の流出事件など、企業における秘密情報の管理・流出防止が問題となる事件が後を絶ちません。

 秘密情報の流出防止については、契約を締結して秘密保持義務を課す方法のほか、不正競争防止法において、営業秘密取得行為等が禁止されています。不正競争防止法上保護される営業秘密は、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの(不正競争防止法2条6項)と定義され、①秘密管理性、②有用性、③非公知性の要件を満たすことが必要とされています。①秘密管理性の要件は、いかなる情報が秘密であるのか従業者等に認識可能な程度に明確化するために必要とされる要件です。

 平成15年の営業秘密の不正取得等に対する刑事罰の導入時に、経済産業省は、企業における営業秘密管理強化のため、営業秘密管理指針を策定し、その後も刑事罰の拡大強化等とあわせ、平成17年、平成22年、平成23年と指針を改訂してきました。これらの改訂を受け、営業秘密管理指針は、(1)営業秘密として保護を受けるための一般的な管理方法と、(2)漏えいリスクを最小化するための高度な管理方法が、並列的に列挙される大部なものとなっていました。

 一方、厳罰化の流れのなか、一時期、裁判例において、厳格な管理をしていなければ、秘密管理性の要件を満たさず、営業秘密にあたらないとの認定を受ける裁判例が見られました。

 本来、営業秘密は共有され、活用されることでその価値を発揮するものであり、実際に保有する企業の実態に応じた秘密の管理がなされていれば、当該情報に接する従業者等には秘密であると認識できることが多いものと考えられます。特に、優秀な技術情報等を保有する中小企業において、常に大企業と同様の大掛かりな管理を求めることは現実的ではなく、厳格な管理をしなければ営業秘密として法の保護を受けられないとなると、逆に営業秘密の価値を損なうことになります。

 これらを受け、経済産業省は、平成27年1月、営業秘密管理指針を、営業秘密として保護を受けるために必要となる最低限の水準の対策を示す指針として、全部改訂しました。あわせて、営業秘密管理指針とは別に、平成28年2月、秘密情報の漏えい防止・漏えい時に推奨される包括的対策について、秘密情報の保護ハンドブック及び参考資料を公表しています。

 もとより、秘密情報漏えいの具体的事案においては、最終的には裁判所が実際の企業の実情、その他の事情を総合的に考慮して、営業秘密該当性を判断することになります。

 これらの指針の改訂・公表に加え、平成28年1月1日には、営業秘密の不正な取得や使用に関する罰則を強化する等した改正不正競争防止法が施行されました。

 このほかにも、マイナンバー法の施行もあり、企業内での情報管理について、一度見直しをする良い機会ではないかと思います。社内の情報について、どのような情報をどのような形式で保有しているのかを洗い出して把握し、一般情報・秘密情報の別、秘密情報の重要度を整理し、情報に応じた対策を選択し、実行に移すという作業をしてみられてはいかがでしょうか。