久保井L⇔O通信20.10.19-10.27(オンライン診療,離婚届も押印廃止,重説オンライン化,財産開示無視で書類送検,裁判傍聴が少しし易く) – 久保井総合法律事務所

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トピックス/コラム詳細

2020年11月25日
コラム

弁護士:久保井 聡明

久保井L⇔O通信20.10.19-10.27(オンライン診療,離婚届も押印廃止,重説オンライン化,財産開示無視で書類送検,裁判傍聴が少しし易く)

57.  【オンライン診療】20.10.19

新型コロナ対策として例外的に拡大されたオンライン診療を一般的に解禁することが議論され始めました。この点、医師が診療するにあたって、患者さんと面談しなければならない、とされている法的根拠は、下記の医師法や医療法の定めです。「一患者」の立場からすると、やっぱり直接診てもらいたい、と私は思いますが、みなさんはいかがでしょうか?

 

【医師法】

第20条 医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。

【医療法】

第1条の2

2 医療は、国民自らの健康の保持増進のための努力を基礎として、医療を受ける者の意向を十分に尊重し、病院、診療所、介護老人保健施設、調剤を実施する薬局その他の医療を提供する施設(以下「医療提供施設」という。)、医療を受ける者の居宅等(居宅その他厚生労働省令で定める場所をいう。以下同じ。)において、医療提供施設の機能に応じ効率的に、かつ、福祉サービスその他の関連するサービスとの有機的な連携を図りつつ提供されなければならない。

 

58.  【婚姻届や離婚届も押印廃止?】20.10.21

少し前にデジタル化・オンライン化の一環として、婚姻届や離婚届についての押印も廃止する方向で検討する、と法務大臣が発表していました。押印が必要とされる法的根拠は、下記の戸籍法の定めです。ただ、特に離婚についてですが、そもそも、世界的には、日本のように協議離婚制度(裁判手続を経ないで離婚届を夫婦が出すだけで離婚を認める)がある国自体が非常に稀と言われています。日本では、現在、裁判手続を経ないため、子どもの養育費についてきちんと取り決められず、子どもの福祉に反しているケースが少なくない、ということが問題になっています。このあたりの課題にどう対処するのか、デジタル化・オンライン化の「数合わせ」だけでは困ります。

 

【戸籍法29条】

 届書には、左の事項を記載し、届出人が、これに署名し、印をおさなければならない。

一 届出事件

二 届出の年月日

三 届出人の出生の年月日、住所及び戸籍の表示

四 届出人と届出事件の本人と異なるときは、届出事件の本人の氏名、出生の年月日、住所、戸籍の表示及び届出人の資格

 

59.  【重要事項説明書オンライン化の方向】20.10.23

今日の朝日新聞に,不動産取引の重要事項説明書のオンライン化の方向,という記事がありました。実現すれば,実務上は大きな影響がありそうです。

 

【朝日新聞10.23朝刊抜粋】

 

国土交通省は、書面交付が義務づけられている不動産取引時の重要事項説明について、オンライン化を認める方針を固めた。関連法の改正をめざす。赤羽一嘉国交相が22日、平井卓也デジタル改革相らと面談し、「不動産取引の書面規制が法律に書かれている。非対面でデジタル化できないか」と語った。

https://digital.asahi.com/articles/DA3S14668181.html

 

60.  【財産開示手続無視で書類送検】20.10.26

今年(2020)4月1日から民事執行法が改正され,判決などによる取立てがよりやり易くなりました。改正の1つの項目として,これまで財産開示手続の不出頭や虚偽陳述について30万円以下の過料の制裁にとどまっていたのを,6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金による制裁を科すこととし,手続の実効性を向上させる,という点がありました。

 

【法務省HP 民事執行法改正の概要】

http://www.moj.go.jp/content/001293955.pdf

 

この点について,裁判所から財産開示手続きを受けたのに出頭しなかったとして、神奈川県警松田署が,10月20日、民事執行法違反(陳情等拒絶)の疑いで、介護士の男性(34)を書類送検した,との報道がありました。同法改正後、同様の検挙は全国で初めて,とのことです。

 

61.  【裁判傍聴が少しし易く】20.10.27

今日の新聞で,最高裁が昨日(10月26日)、専門家の意見を踏まえ,各地の裁判所に,新型コロナウイルス感染拡大対策として2席ずつとしてきた一般傍聴席の間隔を,「1席が相当」などとする内容の通知を行った,ということです。

 

日本の裁判はテレビ中継はされませんので,裁判の公開との関係で傍聴は非常に重要な位置を占めています。少しずつ,「正しく恐れる」,が定着していけばよいですね。下記,憲法の裁判の公開の条文です。

 

【憲法】

第八十二条 裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。

○2 裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行ふことができる。但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保障する国民の権利が問題となつてゐる事件の対審は、常にこれを公開しなければならない。