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トピックス/コラム詳細

2021年03月19日
コラム

弁護士:久保井 聡明

久保井L⇔O通信21.2.9~2.18(クーリングオフもメールでOK立法化,所有者不明土地多数→登記や相続制度改正へ,日本郵政グループ内部通報制度検証報告書,公取・デジタル・プラットフォーム事業者調査最終報告,全銀協・認知症高齢者親族等の預金取引などの考え方公表)

109. 【クーリングオフもメールでOKの立法化へ】21.2.9
さて,報道によると,消費者相は2月5日、現在は書面に限られている訪問販売などのクーリングオフの通知を、電子メールなどでもできるよう法改正する意向 を明らかにした,とのことで,今国会に提出予定の特定商取引法・預託法の改正案に盛り込む意向,とのことです。具体的な法案などが分かればまた配信をさせて頂きたいと思いますが,注目の改正になりそうです。

110. 【所有者不明土地多数→登記や相続制度の改正へ】21.2.12
さて、法務省の法制審議会は、2月10日、所有者に連絡がつかない所有者不明 土地が全体の2割程度に達し、土地の有効活用の弊害になっていること等を受け、不動産登記や相続の制度を大きく変える法改正案を答申しました。

 新聞報道でも大きく取り上げられていますが、①不動産を相続によって取得したことを知ってから3年以内に登記しなければいけない(違反すると過料)、②10 年間、遺産分割が行われていなければ、家庭裁判所に遺産分割の請求をしている 等の一定の例外を除いて法的相続分に従って分割される、③建物がない、担保が 付いていない、土壌汚染がない、境界が明らかになっている等の要件を満たす土 地については、土地所有権を国庫へ帰属する承認を求めることができる(実質 上、土地の所有権放棄)制度の創設、④所有権の登記名義人の氏名や住所が変 わったときは、2年以内に変更登記申請しなければいけない(違反すると過 料)、⑤住民基本台帳ネットワークを使って、一定の場合に職権での登記を行う、⑥所有者が不明な土地・建物について裁判所が管理人を選んで売却し、代金 を供託する制度の創設等、大変、多くの項目について改正が予定されているよう です。

今後、法改正が成立し施行されると、不動産に関する実務や相続、登記実務がガラッっと変わるインパクトがありそうです。下記、改正要綱です。

【法務省の法制審議会、民法・不動産登記法部会の改正要綱案】
http://www.moj.go.jp/content/001340751.pdf

111. 【日本郵政グループの内部通報制度検証報告書の公表】21.2.15
さて,かんぽ生命保険商品の不適正募集の問題で,特別調査委員会は, 2019年12月,不適正募集の情報を現場から吸い上げる日本郵政グループの内部通報制度が機能していないということを指摘しました。これを受け,今回 (2021.1.29),JP改革実行委員会が「日本郵政グループの内部通報窓口その他各種相談窓口等の仕組み及び運用状況等に係る検証報告書」をHPで公表しました(下記のURL)。
https://www.japanpost.jp/pressrelease/jpn/20210129_02.pdf

(2)この点,令和2年6月,公益通報者保護法が改正され,おそらく今年(令和3年)各種ガイドラインが制定され,令和4年6月までに施行されることが予定されています。改正法では,従業員数が300人を超える事業者に対し,内部通報に適切に対応するために必要な体制整備等を義務付けるとともに,「公益通報者対応業務従事者」に対し,通報者の特定につながる事項についての守秘義務を課し,守秘義務違反に対する罰則を定めるなど,通報者保護の強化を図ることを主な改正内容としています。

(3)今回の検証報告書は30頁弱とコンパクトで日本郵政グループの内部通報制度を検討した個別のケースについてのものではありますが,これから改正法対 応を行っていく他社にとっても,また通報窓口担当をされている従業員の方に とっても参考になる部分が少なくないように思いました。最初に目次が2ページにわたって書かれていますが,この目次を見るだけでも,自分たちの会社の課題が浮かび上がってくるように思いました。

112. 【公取・デジタル・プラットフォーム事業者調査最終報告】21.2.18
さて,昨日(21.2.17),公正取引委員会は,「デジタル・プラットフォーム事業者の取引慣行等に関する実態調査(デジタル広告分野)について(最終報告)」を 公表しました。

公正取引委員会としては,調査結果を踏まえ,消費者利益の向上のために以下の取組を実施する,としています。
① 独占禁止法上問題となる案件については厳正に対処
② デジタル分野の企業結合について令和元年に改正されたガイドライン等を踏まえ迅速かつ的確に審査
③ デジタル・プラットフォーム事業者の台頭の影響を受け変化する市場の競争状況を引き続き注視し実態調査を行う
④ デジタル市場競争本部との連携や関係省庁との協力に積極的に取り組む
⑤ 海外競争当局と継続的な協力を進めていく

下記,公正取引委員会のHPです。

https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2021/feb/210217.html

113. 【全銀協・認知症高齢者親族等の預金取引などの考え方公表】21.2.18
さて,認知症などで高齢者が預金を自ら引き出せなくなり、代わりに親族らが求めた際に銀行はどうするかについて,昨日(21.2.18),全国銀行協会が,「金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関との連携強化に関する考え方」をまとめました(下記,全銀協のURLです)。

2012年時点で65歳以上の高齢者のうち認知症の方の数が約462万人と推計されているのに対し,2018年12月末で成年後見制度の利用総数が22万人にとどまっている,という状況を受けてのとりまとめ,ということのようです。

報道されている,親族等の無権代理人に関する部分を抜粋しておきましたが,その他にも,銀行と社会福祉関係機関との連携にあたっての個人情報保護法上の留意点など,実際の場面で悩ましい部分について,一定の方向性が書かれています。

https://www.zenginkyo.or.jp/news/2021/n021801/

【無権代理人との取引の部分の抜粋】
親族等による無権代理取引は、本人の認知判断能力が低下した場合かつ成年後見制度を利用していない(できない)場合において行う、極めて限定的な対応である。成年後見制度の利用を求めることが基本であり、成年後見人等が指定された後は、成年後見人等以外の親族等からの払出し(振込)依頼には応じず、成年後見人等からの払出し(振込)依頼を求めることが基本であ
る。
本人が認知判断能力を喪失していることを確認する方法としては、本人との面談、診断書の提出、本人の担当医からのヒアリング等に加え、診断書がない場合についても、複数行員による本人面談実施や医療介護費の内容等のエビデンスを確認することなどが考えられる。対面での対応が難しい場合には、非対面ツールの活用等も想定される。
認知判断能力を喪失する以前であれば本人が支払っていたであろう本人の医療費等の支払い手続きを親族等が代わりにする行為など、本人の利益に適合することが明らかである場合に限り、依頼に応じることが考えられる。
任意後見監督人が選任される前であっても委任契約の受任者である任意後見人と の取引が可能。
無権代理の親族等からの払出し依頼に応じることによるリスクは免れないものの、真に本人の利益のために行われていることを確認することなどにより、当該リスクを低減させることができる。
預金が僅少となり、投資信託等の金融商品しかまとまった資産として残っていない顧客の医療費や施設入居費、生活費等の費用を支払うために、親族等から本人の保有する投資信託等の金融商品の解約等の依頼があり、やむを得ず対応する場合、基本的には上記の預金の払出し(振込)の考え方と同様であるが、投資信託等の金融商品は価格変動があることから、一旦、解約等を
行った場合、預金と異なり、原状回復が困難である。この点に鑑み、金融商品の解約等については、より慎重な対応が求められる。