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トピックス/コラム詳細

2021年06月10日
コラム

弁護士:久保井 聡明

久保井L⇔O通信21.4.22-5.6(ビジネスと人権,公益通報→指針案,LINEに行政指導,相続人の欠格事由と代襲,株の不正推奨)

135. 【ビジネスと人権】21.4.22
さて、4.17の日経新聞に、「株式市場でESG(環境・社会・企業統治)を巡る投 資家の目線が厳しくなってきた。中国・新疆ウイグル自治区の人権問題への対応 が不十分とみなされる良品計画などの株価は上値が重く、軍による人権侵害が指 摘されるミャンマーで事業を展開するキリンホールディングスも軟調だ。企業は 「E(環境)」に加えて「S(社会)」への対応も重要になっている。」との記事 が掲載されていました。
この点、日本弁護士連合会でも、「ビジネスと人権」に関して積極的に取り組ん でいます。下記は日弁連のHPの「ビジネスと人権」に関するページですが、参考 になる情報が色々掲載されています。

https://www.nichibenren.or.jp/activity/international/human_rights/business.html

136. 【公益通報→指針案】21.4.26
さて、bcc通信74(20.11.24)でもお知らせしましたように、公益通報者保護法 が改正され、令和4年からの施行が予定されています。それに先だって、本年 (令和3年)に国からどのような態勢を整備すべきか等の指針が公表されること になっています。

この点、消費者庁の「公益通報者保護法に基づく指針等に関する検討会」が、こ れまでの検討結果をまとめた報告書を公表しました。報告書には指針案が掲載さ れており、それぞれの指針の考え方も解説されています。今後、令和4年の施行 に向けて、各企業などでの対応が必要となりますね。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/meeting_materials/review_meeting_001/assets/review_meeting_001_210421_0001.pdf

137. 【LINEに行政指導】21.4.28
さて、bcc通信125(21.3.22)、126(21.3.24)で配信したLINEについて、個人 情報保護委員会が個人情報保護法41条に基づく指導を行いました。個人データの 取扱いを委託する場合には、法22条に基づき委託先に対する必要かつ適切な監督 を行う義務があるところ、法20条に基づき自らが講ずべき安全管理措置と同等の 措置が講じられるよう、必要かつ適切な監督を行うこと、という趣旨のようで す。下記、URLです。
https://www.ppc.go.jp/files/pdf/210423_houdou.pdf

138. 【相続人の欠格事由と代襲】21.4.30
さて、最近、「覚醒剤で殺害容疑、元妻逮捕 「紀州のドン・ファン」資産家急 死」、という報道がしきりにされています。死亡から年月が経っており、直接証 拠がどこまであるのかも分かりませんので、今後、起訴されるのか、起訴された としても有罪になるのか、現時点では何とも言えない感じですね。

この点、もし、起訴されて殺人で有罪になった場合は相続人の欠格事由にあたり ますので、遺産を受け取ることはできなくなります(民法891条)。ただ、相 続人の欠格事由も、死亡と同様に代襲相続の原因になります(同887条2 項)。今回の事件ではお子さんがいないので代襲は関係なさそうです。

【民法】
(相続人の欠格事由)
第八百九十一条 次に掲げる者は、相続人となることができない。
一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡する に至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
二 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった 者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しく は直系血族であったときは、この限りでない。
三 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消 し、又は変更することを妨げた者
四 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取 り消させ、又は変更させた者
五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

(子及びその代襲者等の相続権)
第八百八十七条 被相続人の子は、相続人となる。
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規 定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子が これを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限 りでない。

139. 【株の不正推奨】21.5.6
さて、ドンキホーテホールディングス(HD)株取引の不正推奨事件で金融商品取 引法違反(取引推奨)罪に問われた前社長の判決公判が4月27日、東京地裁であ り、懲役2年、執行猶予4年の有罪判決が言い渡された、と報道されました。

この不正推奨という罪は、2014年の金融商品取引法の改正で導入されたもの,と の ことですが、今回の事件が初めて起訴された事件だったようです。

この罪で注意しなければいけないのは、未公表の重要事実を知っている情報提供 者が、★未公表の重要事実を相手に伝えなくても★、相手に不正に利益を得させよ うであるとか、損失を免れさせようという不正の目的があり、相手方が公表前に 実際に取引をすれば成立する、ということです。

今回の事件でも取引の推奨を受けて株取引をして実際に利益を得た側は、インサ イダー情報の提供を受けて取引をしたわけではない、ということで、起訴すらさ れていない、ようです。もちろん、業務上の必要性があって行う情報共有であれ ば、不正の目的がないことになりますが、なかなかビジネスの現場では区別が難 しいこともありそうです。

これまでこの罪についてはほとんど意識されてこな かったように思いますが、 注意が必要ですね。