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2016年06月01日
親族関係

弁護士 : 松本 智子

夫婦別姓と再婚禁止期間に関する最高裁判所大法廷判決

 最高裁判所大法廷は、平成27年12月16日、夫婦別姓と再婚禁止期間に関する憲法判断を示しました。この二つの規定は、日本が昭和60年に批准した女子差別撤廃条約について国連委員会から繰り返し懸念と廃止が要請され、国会でも数度改正が検討されましたが、反対論が根強くあり、改正には至らなかった問題についての最高裁判所の判断であり、非常に注目されていました。

 

<夫婦別姓>

 民法750条は、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。」と定めています。

 文言上は、性別に基づく差別的取り扱いを定めているわけではなく、婚姻の際の協議に委ねられていますが、現実には96%を超える夫婦が夫の氏を称する婚姻をしています。

 氏は人が個人として尊重される基礎であり、氏を改める者にとっては、アイデンティティの喪失感、特に近年晩婚化と女性の社会進出が進み、婚姻前の氏を使用する中で社会的な地位や業績が築かれる期間が長くなっていることから、婚姻による改姓で従前の氏で形成された識別機能が阻害され、個人の信用、評価、名誉感情等に影響が及ぶという不利益を被る女性が増加し、これを避けるため、あえて婚姻をしない(事実婚)という選択をする女性が存在する現実があります。

 最高裁は、夫婦同氏制は我が国の社会に定着しており、氏は家族の呼称としての意義があり、これを一つに定めることには合理性が認められ、近時婚姻前の氏を通称として使用することが社会的に広まっており不利益が一定程度緩和されうることから、上述の不利益等は認められるものの、個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理性を欠く制度であるとは認められず、憲法24条に違反するものではないと判断しました。加えて、最高裁は、選択的夫婦別姓制度を合理性のないものと断ずるものではなく、夫婦同氏制は、婚姻制度や氏の在り方に対する社会の受け止め方に依拠するところが少なくなく、国会で論ぜられ、判断されるべき事柄に他ならないとしています。

 これに対して、最高裁の女性裁判官3名全員と外2名の裁判官は、夫婦が別の氏を称することを全く認めないことに合理性を認めることはできず、憲法24条違反であるとの意見、反対意見を述べています。

 子の氏をどうするのかという問題はありますが、全く別姓を選択する余地を認めない現行の規定でよいのか、離婚・再婚・晩婚・子供をもうけない夫婦等、家族のかたちが多様化している中で、同氏によって維持されるべき家族観とはどのようなものなのか、国民一人一人がよく考えて、国会での議論が盛り上がっていくことが期待されます。

 

<再婚禁止期間>

 民法733条1項は、「女は、前婚の解消又は取消しの日から六箇月を経過した後でなければ、再婚をすることができない」と定めています。

 この規定は、女性が離婚後すぐに再婚をして子が生まれると、父親が前夫か後夫か分からなくなる事態を防ぐために設けられたものとされています。

 最高裁は、嫡出父子関係に関する民法772条が「婚姻の成立した日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものとみなし、夫の子と推定する」と規定していることから、再婚禁止期間は百日で足りるとし、百日を超える部分を憲法違反としました。

 この点、DNA鑑定等により父子関係を容易かつ正確に判定することができるようになっている現在、父子関係の混乱を防止するために、女性のみに再婚禁止期間を設けるという制度自体に合理性があるのか、という問題意識があります。この点については、国会において、議論を続けていくことになります。

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