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コラム詳細

2022年05月20日
会社法関係     不動産関係     独占禁止法関係
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弁護士 : 久保井 聡明

久保井L⇔O通信22.3.7-3.28(グレーゾーン解消制度,ESG行動基準,借地借家・宅建業デジタル化)

198. 【グレーゾーン解消制度】22.3.7
さて,2022.3.2の日経新聞で,経済産業省が,弁理士の独占業務である特許書類の作成に人工知能(AI)を用いることに関する「グレーゾーン解消制度」の照会に対して,「適法」と回答を行ったと報道されていました。弁護士についても,弁護士法72条で他に法律がない限り法律事務の取扱いを独占することとされていますが,例えば,ある企業がAIを使って法律相談的なサービスをすることが許されるのか,などの問題が現実化しつつあります。

(2)それはさておき,記事にある「グレーゾーン解消制度」をご存じでしょうか。経産省のHPを引用しますと,「グレーゾーン解消制度」は,事業に対する規制の適用の有無を,事業者が照会することができる制度で,事業者が新事業活動を行うに先立ち,あらかじめ規制の適用の有無について,政府に照会し,事業所管大臣から規制所管大臣への確認を経て,規制の適用の有無について回答するもの,とあります。ここで「ミソ」なのは,「事業所管大臣から規制所管大臣への確認を経て」という部分です。たとえば,新しい事業を始めようと考えた企業 が,規制の適用の有無を確認するため,当該規制を所管している官庁だけに聞いたらどうなりそうでしょうか。どうしても,規制を所管する官庁としては,保守的な回答をしがち,ですよね。そこで,事業を所管する大臣から規制を所管する大臣への確認,というルートを通すことで,保守的な回答に偏り過ぎないよう,牽制機能を果たしている,というイメージでしょうか。実際の事例を見ると,事業を所管する官庁は圧倒的に経済産業省が多い(新規事業を所管することが多い)ようです。

(3)当事務所でも,この制度を使った案件がありました。また,すでに公表されている事例などを参考に顧問先にアドバイスをさせて頂くことはちょくちょくあります。新規事業をしようということで,規制が気になる場合には思い出してみて損はない制度です。

【経産省HPで紹介されているグレーゾーン解消制度の活用事例】
https://www.meti.go.jp/policy/jigyou_saisei/kyousouryoku_kyouka/shinjigyo-kaitakuseidosuishin/result/gray_zone.html

 



199. 【ESG評価機関の行動基準】22.3.14
さて,2022.3.9の日経新聞に,金融庁が,2022年中にも,「企業のESG(環境・社会・企業統治)の取り組みを評価する機関を対象に「行動規範」をつくる。いわゆる格付け機関が評価手続きを公開するよう求め,コンサルティ ングとの同時提供などで生まれるモラルハザードを防ぐ。」との記事がありました。

(2)昔からいわゆる格付け機関のマッチポンプ,利益相反は問題視されてきました。最近,新聞やテレビで見ない日はないと言っても過言ではないSDGsについても,「SDGsウォッシュ」(→本当はやってないのに,やってる感を出している)が問題になっています。今回の金融庁の「行動規範」づくり,評価手続の公開は,言わば,格付け機関を格付けするようなものです。是非,評価手続の透明性を向上させる行動規範を作って欲しいと思います。

 



200. 【借地借家のデジタル化】22.3.22
いつもお世話になっています。(今回,記念すべき200回です!)

(1)さて,法律相談などでたまに,「先生,契約書が無いんですけど,契約は効力が生じますか?」というようなことを聞かれることがあります。この点,法律論としては,★原則として★,契約は当事者(例えば売買契約なら売主と買主)の意思表示が合致することだけで成立し,たとえ契約書という書面がなくても効力が生じる,ということになります。ただ,後々紛争になって,例えば,売主が,「確かに買主候補者と値段交渉はしていたけど,結局売りますという承諾はしていなかった。」と主張した際,契約書がなければ,本当に「売ります」「買います」という意思表示が合致していたのかどうか,最終的に証明することがで きなくなる可能性がある,ということになります。裁判で意思表示の合致を証明できなければ,結局,契約が成立していた,ということが認められなくなってしまう,そういうリスクを避けるためには,法律的に必須でないとしても,できるだけ書面で残しておくのがよい,ということになります。

(2)上記で★原則として★と記載したのは,一定の契約については,法律で,書面で契約をしておかないと効力が生じない,とされていることがあるためです。こういった契約についての典型は何か,と聞かれたら,多くの人が,借地借家法の定期借地契約や定期借家契約を思い浮かべられると思います。この点,「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」(令和3年5月19日法律第37号)によって,この定期借地契約や定期借家契約について,これまでの「書面」に加えて,一定の要件のもとで,「電磁的記録」によることが認められることになります。施行は,公布の日から1年を超えない政令で定める日,なので,今年(令和4年)5月中,ということになります。

(3)以下,少し長くなりますが,改正後の借地借家法の条文を掲載しておきます。★1点,注意が必要なのは,事業用定期借地契約については,引き続き公正証書という書面による必要がある,ということです。

【改正後の借地借家法の抜粋】 ★部分は久保井記載
(定期借地権)
第二十二条 存続期間を五十年以上として借地権を設定する場合においては,第九条及び第十六条の規定にかかわらず,契約の更新(更新の請求及び土地の使用の継続によるものを含む。次条第一項において同じ。)及び建物の築造による存続期間の延長がなく,並びに第十三条の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。この場合においては,その特約は,公正証書による等書面によってしなければならない。
2 前項前段の特約がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式,磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって,電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第三十八条第二項及び第三十九条第三項において同じ。)によってされたときは,その特約は,書面によってされたものとみなして,前項後段の規定を適用する。(★この2項が改正で追加)

(事業用定期借地権等)
第二十三条 専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く。次項において同じ。)の所有を目的とし,かつ,存続期間を三十年以上五十年未満として借地権を設定する場合においては,第九条及び第十六条の規定にかかわらず,契約の更新及び建物の築造による存続期間の延長がなく,並びに第十三条の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。
2 専ら事業の用に供する建物の所有を目的とし,かつ,存続期間を十年以上三十年未満として借地権を設定する場合には,第三条から第八条まで,第十三条及び第十八条の規定は,適用しない。
3 前二項に規定する借地権の設定を目的とする契約は,公正証書によってしなければならない。(★この,公正証書でしなければならないという部分は引き続き同じ)

(定期建物賃貸借)
第三十八条 期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては,公正証書による等書面によって契約をするときに限り,第三十条の規定にかかわらず,契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には,第二十九条第一項の規定を適用しない。
2 前項の規定による建物の賃貸借の契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは,その契約は,書面によってされたものとみなして,同項の規定を適用する。(★この部分改正)
3 第一項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは,建物の賃貸人は,あらかじめ,建物の賃借人に対し,同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく,期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて,その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。
4 建物の賃貸人は,前項の規定による書面の交付に代えて,政令で定めるところにより,建物の賃借人の承諾を得て,当該書面に記載すべき事項を電磁的方法 (電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって法務省令で定めるものをいう。)により提供することができる。この場合において,当該建物の賃貸人は,当該書面を交付したものとみなす。(★この部分改正)
5 建物の賃貸人が第三項の規定による説明をしなかったときは,契約の更新がないこととする旨の定めは,無効とする。
6 第一項の規定による建物の賃貸借において,期間が一年以上である場合には,建物の賃貸人は,期間の満了の一年前から六月前までの間(以下この項において「通知期間」という。)に建物の賃借人に対し期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければ,その終了を建物の賃借人に対抗することができない。ただし,建物の賃貸人が通知期間の経過後建物の賃借人に対しその旨の通知をした場合においては,その通知の日から六月を経過した後は,この限りでない。
7 第一項の規定による居住の用に供する建物の賃貸借(床面積(建物の一部分を賃貸借の目的とする場合にあっては,当該一部分の床面積)が二百平方メートル未満の建物に係るものに限る。)において,転勤,療養,親族の介護その他のやむを得ない事情により,建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは,建物の賃借人は,建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。この場合においては,建物の賃貸借は,解約の申入れの日から一月を経過することによって終了する。
8 前二項の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは,無効とする。
9 第三十二条の規定は,第一項の規定による建物の賃貸借において,借賃の改定に係る特約がある場合には,適用しない。

(取壊し予定の建物の賃貸借)
第三十九条 法令又は契約により一定の期間を経過した後に建物を取り壊すべきことが明らかな場合において,建物の賃貸借をするときは,第三十条の規定にかかわらず,建物を取り壊すこととなる時に賃貸借が終了する旨を定めることができる。
2 前項の特約は,同項の建物を取り壊すべき事由を記載した書面によってしなければならない。
3 第一項の特約がその内容及び前項に規定する事由を記録した電磁的記録によってされたときは,その特約は,同項の書面によってされたものとみなして,同項の規定を適用する。(★この部分が改正)

附 則 (令和三年五月一九日法律第三七号) 抄
(第三十五条の規定の施行に伴う経過措置)
第五条 第三十五条の規定による改正後の借地借家法(以下この条において「新借地借家法」という。)第二十二条第二項の規定は,第三十五条の規定の施行の日以後にされる新借地借家法第二十二条第一項前段の特約について適用する。
2 新借地借家法第三十八条第二項の規定は,第三十五条の規定の施行の日以後にされる新借地借家法第三十八条第一項の規定による建物の賃貸借の契約について適用する。
3 新借地借家法第三十九条第三項の規定は,第三十五条の規定の施行の日以後にされる新借地借家法第三十九条第一項の特約について適用する。

 



201. 【宅建業のデジタル化】22.3.28
さて,前回のbcc通信200回では,定期借地契約,定期借家契約のデジタル化についてご紹介しましたが,不動産取引関係ではもう一つ大きな改正があります。宅建業法でも,重要事項説明書等について,国土交通省令の定めるところによって電磁的方法にって提供することができる,とされています。改正法の施行は同じく令和4年5月中です。

(2)以下,宅建業法の改正法の該当抜粋です。(★部分は筆者)
【宅建業法】
引態様の別を明らかにしなければならない。
(媒介契約)
第三十四条の二 宅地建物取引業者は,宅地又は建物の売買又は交換の媒介の契約(以下この条において「媒介契約」という。)を締結したときは,遅滞なく, 次に掲げる事項を記載した書面を作成して記名押印し,依頼者にこれを交付しなければならない。
(★中略)
11 宅地建物取引業者は,第一項の書面の交付に代えて,政令で定めるところにより,依頼者の承諾を得て,当該書面に記載すべき事項を電磁的方法(電子情 報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法をいう。以下同じ。)であつて同項の規定による記名押印に代わる措置を講ずるものとして国土交通省令で定めるものにより提供することができる。この場合において,当該宅地建物取引業者は,当該書面に記名押印し,これを交付したものとみなす。(★今回追加)
12 宅地建物取引業者は,第六項の規定による書面の引渡しに代えて,政令で定めるところにより,依頼者の承諾を得て,当該書面において証されるべき事項を電磁的方法であつて国土交通省令で定めるものにより提供することができる。この場合において,当該宅地建物取引業者は,当該書面を引き渡したものとみなす。(★今回追加)

(重要事項の説明等)
第三十五条 宅地建物取引業者は,宅地若しくは建物の売買,交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買,交換若しくは貸借の各当事者(以下「宅地建物取引業者の相手方等」という。)に対して,その者が取得し,又は借りようとしている宅地又は建物に関し,その売買,交換又は貸借の契約が成立するまでの間に,宅地建物取引士をして,少なくとも次に掲げる事項について,これらの事項を記載した書面(第五号において図面を必要とするときは,図面)を交付して説明をさせなければならない。
(★中略)
8 宅地建物取引業者は,第一項から第三項までの規定による書面の交付に代えて,政令で定めるところにより,第一項に規定する宅地建物取引業者の相手方等,第二項に規定する宅地若しくは建物の割賦販売の相手方又は第三項に規定する売買の相手方の承諾を得て,宅地建物取引士に,当該書面に記載すべき事項を電磁的方法であつて第五項の規定による措置に代わる措置を講ずるものとして国土交通省令で定めるものにより提供させることができる。この場合において,当該宅地建物取引業者は,当該宅地建物取引士に当該書面を交付させたものとみなし,同項の規定は,適用しない。(★今回追加)
9 宅地建物取引業者は,第六項の規定により読み替えて適用する第一項又は第二項の規定による書面の交付に代えて,政令で定めるところにより,第六項の規定により読み替えて適用する第一項に規定する宅地建物取引業者の相手方等である宅地建物取引業者又は第六項の規定により読み替えて適用する第二項に規定する宅地若しくは建物の割賦販売の相手方である宅地建物取引業者の承諾を得て,当該書面に記載すべき事項を電磁的方法であつて第七項の規定による措置に代わる措置を講ずるものとして国土交通省令で定めるものにより提供することができる。この場合において,当該宅地建物取引業者は,当該書面を交付したものとみなし,同項の規定は,適用しない。(★今回追加)

(書面の交付)
第三十七条 宅地建物取引業者は,宅地又は建物の売買又は交換に関し,自ら当事者として契約を締結したときはその相手方に,当事者を代理して契約を締結したときはその相手方及び代理を依頼した者に,その媒介により契約が成立したときは当該契約の各当事者に,遅滞なく,次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。
(★中略)
5 宅地建物取引業者は,第二項の規定による書面の交付に代えて,政令で定めるところにより,次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める者の承諾を得て,当該書面に記載すべき事項を電磁的方法であつて第三項の規定による措置に代わる措置を講ずるものとして国土交通省令で定めるものにより提供することができる。この場合において,当該宅地建物取引業者は,当該書面を交付したものとみなし,同項の規定は,適用しない(★今回追加)
一 当事者を代理して契約を締結した場合 当該契約の相手方及び代理を依頼した者
二 その媒介により契約が成立した場合 当該契約の各当事者

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