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2022年02月07日
労働関係     独占禁止法関係     一般民事関係
個人情報関係     行政関係     その他

弁護士 : 久保井 聡明

久保井L⇔O通信22.1.5-1.31(百条委員会、女性トイレ使用、5年無期転換、不正競争防止法、個人情報漏えい)

189. 【百条委員会】22.1.5
新年明けましておめでとうございます。今年も久保井総合法律事務所をよろしくお願いします。今年も気になる法務関連記事があれば、bcc通信でご紹介したいと思いますので、またご感想などお寄せください。

(1)さて、2022.1.3日経新聞で、静岡県熱海市の大規模土石流で、起点となった土地の盛り土の崩落危険性を認識しながら、市が所有者に安全対策工事を求める措置命令などの発令を見送ったことについて、市議会が調査特別委員会(百条 委員会)で対応を検証することになった、と報道されています。

(2)この「百条委員会」という用語は、たまに新聞などでもご覧になることがあると思います。昨年、大阪でも、池田市の前市長が市長室にサウナを設置していたケースの調査で「百条委員会」の調査が行われ話題になっていました。

(3)この制度は、普通地方公共団体の議会が当該普通公共団体の事務に関する調査を行うことができるもので、地方自治法百条に根拠を持つために、「百条委員会」と言われているものです。

(4)下記、地方自治法百条の抜粋ですが、調査を行うために特に必要があると認めるときは、民事訴訟と同様のルールのもとで関係人の出頭及び証言並びに記録の提出を請求することができ(1項、2項)、正当な理由がないのに出頭しなかったり、証言を拒んだ場合には刑罰が課され(3項)、偽証罪の制裁もある(7項)など、とても強力な制度です。企業で不祥事が発生したときに設置されるいわゆる第三者委員会の調査はあくまでも任意の調査ですが、この「百条委員会」は法律に根拠を持つ調査です。

【地方自治法抜粋】
第百条 普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の事務…に関する調査を行うことができる。この場合において、当該調査を行うため特に必要があると認めるときは、選挙人その他の関係人の出頭及び証言並びに記録の提出を請求することができる。
② 民事訴訟に関する法令の規定中証人の訊問に関する規定は、この法律に特別の定めがあるものを除くほか、前項後段の規定により議会が当該普通地方公共団体の事務に関する調査のため選挙人その他の関係人の証言を請求する場合に、これを準用する。ただし、過料、罰金、拘留又は勾引に関する規定は、この限りでない。
③ 第一項後段の規定により出頭又は記録の提出の請求を受けた選挙人その他の関係人が、正当の理由がないのに、議会に出頭せず若しくは記録を提出しないとき又は証言を拒んだときは、六箇月以下の禁錮又は十万円以下の罰金に処する。
(中略)
⑦ 第二項において準用する民事訴訟に関する法令の規定により宣誓した選挙人その他の関係人が虚偽の陳述をしたときは、これを三箇月以上五年以下の禁錮に処する。
(後略)



190. 【戸籍上男性、性自認女性の女性トイレ使用】22.1.12
さて、2022.1.7の朝日新聞に、「大阪市内にある商業施設の女性トイレに入ったとして、大阪府警は6日、戸籍上は男性で自認する性は女性だと説明する40代の施設利用客…を建造物侵入容疑で書類送検した。」との記事がありました。

(2)近時、LGBTQなど性の多様性が注目されています。bcc通信123(21.3.18)でも、札幌地裁が、同性間の婚姻を認める規定を設けていない民法及び戸籍法の婚姻に関する諸規定は、同性愛者に対しては、婚姻によって生じる法的効果の一部ですらもこれを享受する法的手段を提供しないこととしており、立法府の裁量権の範囲を超えたものであって、その限度で憲法14条1項に違反する、との判決を下したことを取り上げさせて頂きました。

(3)今回報道されたような、戸籍上の性別と自認する性別が異なると主張する方が、自認する性別のトイレを利用することについては、センシティブな問題をはらんでいます。東京高等裁判所2021.5.27判決では、戸籍上は男性で日頃は女性として暮らす性同一性障害の50代の経済産業省職員が、女性トイレの使用制限は差別だなどと国を訴えた訴訟の控訴審判決で、使用を制限した同省の対応は「注意義務を尽くさなかったとは認め難い」として違法ではないと判断し、違法性を認めた一審・東京地裁判決を覆しました。この東京高裁判決の事例の職員は、健康上の理由で性別適合手術は受けていないものの、2010年以降は女性の服を着用するなど女性として勤務することを経産省に認められていたものの、戸籍上の性別が男性との理由で、勤務フロアから2階以上離れた女性トイレを使うよう同省に求められ、2015年に提訴した、というケースのようです。高裁判決は、「性自認に基づいた性別で社会生活を送ることは法律上保護された利益」と認めつつ、性同一性障害への同省の対応は「先進的な取り組みがしやすい民間企業とは事情が異なる」、原告が同省側に性同一性障害と告げた2009年時は「各官庁で指針となる規範や参考事例はなく、(戸籍上で)性別変更をしていないトランスジェンダーへの対応は未知だった」として、注意義務違反を否定したものです。

(4)この事件は現在、最高裁に上告がされているようです。もちろん、この種の事案はあくまでも事例判断になるとは思いますが、それでも一定の方向性が示される可能性があり注目されます。



191. 【5年の無期転換の裁判例(訓練期間)】22.1.18
さて、今朝(22.1.18)の朝日新聞に、「KLMオランダ航空で客室乗務員として働いていた3人が、有期雇用の契約が5年を超えるとして無期雇用への転換を申し入れたのに雇い止めされたのは違法とする判決を東京地裁が17日に出した。焦点となった入社後の訓練期間について有期契約の期間に含まれると地 裁は判断し、無期転換を認めた。」との記事が掲載されていました。判決文を実際に見ていませんが、訓練期間にも、指揮命令関係などの労働契約の実態があった、という判断をしたのではないか、と思われます。

(2)この点、下記が関連する条文です。労働者から無期労働契約の締結を申し込まれた場合、使用者は申込みを「承諾したものとみなす」とされており、これにより当然に無期労働契約が成立したことになります。今回のケースは、その前提条件である、「契約期間を通算した期間…が五年を超える労働者」にあたるかどうか、が争われていたようです。

【労働契約法】
第十八条 同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約(契約期間の始期の到来前のものを除く。以下この条において同じ。)の契約期間を通算した期間(次項において「通算契約期間」という。)が五年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。この場合において、当該申込みに係る期間の定めのない労働契約の内容である労働条件は、現に締結している有期労働契約の内容である労働条件(契約期間を除く。)と同一の労働条件(当該労働条件(契約期間を除く。)について別段の定めがある部分を除く。)とする。

2 当該使用者との間で締結された一の有期労働契約の契約期間が満了した日と当該使用者との間で締結されたその次の有期労働契約の契約期間の初日との間にこれらの契約期間のいずれにも含まれない期間(これらの契約期間が連続すると認められるものとして厚生労働省令で定める基準に該当する場合の当該いずれにも含まれない期間を除く。以下この項において「空白期間」という。)があり、当該空白期間が六月(当該空白期間の直前に満了した一の有期労働契約の契約期間(当該一の有期労働契約を含む二以上の有期労働契約の契約期間の間に空白期間がないときは、当該二以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間。以下この項において同じ。)が一年に満たない場合にあっては、当該一の有期労働契約の契約期間に二分の一を乗じて得た期間を基礎として厚生労働省令で定める期間)以上であるときは、当該空白期間前に満了した有期労働契約の契約期間は、通算契約期間に算入しない。



192. 【税理士の独立と不正競争防止法容疑】22.1.24
さて、2022.1.20の日経新聞に、京都府警が、税理士らが、働いていた税理士法人から独立する際に営業秘密である顧客情報(取引先2社の財務情報や給与情報)をコンピューターから外付けハードディスクに複製して不正に持ち出したとして、この税理士らを不正競争防止法違反などの疑いで逮捕した、との記事がありました。記事によると、元勤務先の税理士法人で顧客の契約解除が相次いだため、同法人が調べたところ、2人が退職前にデータを持ち出した記録が見つかり発覚した、とのことです。

(2)社員が独立するにあたって営業秘密を持ち出すという事例は、たまにあるご相談事例です。これを防ぐためには、①本当に秘密にしなければいけない情報を社内できちんと「秘密」として管理すること(データアクセス権限の制限やパスワード管理、物理的な金庫での保管など)、②社員の入社時や退社時に営業秘密の持ち出しをしない等ときちんと誓約してもらったり、就業規則などでもこの点を記載しておくことなど、事前の対応が大切です。

(3)それでも実際に不正な持ち出しがあれば、今回で問題となった不正競争防止法による対応が考えられます。下記、不正競争防止法の関連条文です。四号が営業秘密を不正に取得する行為など(今回でいうと独立した税理士の行為)を、五号や六号は、不正に取得された営業秘密と知ったり重大な過失による知らずに営業秘密を使ったりする行為を規制しています。今回は税理士が独立したケースですが、別のライバル税理士法人に移籍して、そのライバル税理士法人が不正に持ち出された営業秘密と知りながら(或いは、ほんのわずかに注意すれば知ることができたのに注意を怠って気付かずに)、これを使った場合などがこれに該当します。

【不正競争防止法】
(定義)
第二条 この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう
(中略)
四 窃取、詐欺、強迫その他の不正の手段により営業秘密を取得する行為(以下「営業秘密不正取得行為」という。)又は営業秘密不正取得行為により取得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為(秘密を保持しつつ特定の者に示すことを含む…)
五 その営業秘密について営業秘密不正取得行為が介在したことを知って、若しくは重大な過失により知らないで営業秘密を取得し、又はその取得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為
六 その取得した後にその営業秘密について営業秘密不正取得行為が介在したことを知って、又は重大な過失により知らないでその取得した営業秘密を使用し、又は開示する行為



193. 【個人情報保護委員会の個人情報漏えい】22.1.31
さて、改正個人情報保護法が2022年4月1日に施行されます。このこともあり、このところ個人情報保護委員会のHPの新着情報の欄(下記のURL)には、改正法施行に向けてのガイドラインのパブコメなど次々に重要な情報が公表されています。私もちゃんと勉強しないと、と少し焦っているところです。
https://www.ppc.go.jp/information/

(2)ところで、同じ個人情報保護委員会のHPの新着情報の2022.1.18に、「個人情報の漏えいについて」とそっけない題名がありました。

中身を見てみると、「令和4年1月7日(金)13 時に意見募集手続の結果をウェブ上で公表したところ、誤った PDF ファイルが 13 時 40 分までの間、掲載されたことにより、意見提出者12名の氏名及び一部所属先が公表されておりました(現在は氏名及び一部所属先が記載されていない正しいファイルに差し替えの上、掲載済みです。)。」とありました。

個人情報保護の総本山の個人情報保護委員会ですら、個人情報を漏えいしてしまう、ということで、改めて個人情報保護の難しさと、対策に必要性を感じた次第です。

 

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