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2021年12月27日
不動産関係     知的財産権関係     独占禁止法関係
公益通報関係     その他

弁護士 : 久保井 聡明

久保井L⇔O通信21.10.4-10.25(インクジェットプリンター設計変更と不公正な取引方法、入居者死亡事故物件の告知指針公表、特許権侵害訴訟の審理モデル、公益通報者保護法の指針解説)

177. 【インクジェットプリンター設計変更と不公正な取引方法】21.10.4
さて、21.10.1朝日新聞などによると、21.9.30、東京地裁は、互換品のカートリッジを販売するエレコム(大阪市)などが、ブラザー工業(名古屋市)がインクジェットプリンターの設計を変えて純正品のインクカートリッジしか使えないようにしたことについて、設計変更の差し止めと約1500万円の賠償を求めた訴訟で、設計変更が独占禁止法違反(不公正な取引方法)にあたると認め、約150万円の賠償をブラザーに命ずる判決を言い渡した(ただし設計変更はすでに、変更に対応する互換品をエレコムが開発していた、ということで請求棄却)、とのことです。

(2)記事によると、ブラザーが2018.12以降に製造・販売したプリンターについて、インクカートリッジの読み取り機能の設計を変更し、互換品を認識しないようにした目的について、「市場シェア率が高い互換品の販売を困難にするため」であり、消費者が純正品を購入せざるを得ない状況になった、このような設計変更に「正当性はなく、市場での公正な競争を阻害するおそれがある。不当な抱き合わせ販売だ」と判断した、とのことです。

(3)この点、過去の裁判例のなかには、エレベーターメーカー系列の保守業者が系列外の保守業者と保守契約を締結しているユーザーに対して、交換部品だけの販売はせず、部品取り替え工事を合わせて発注しなければ注文に応じない、とした行為が独占禁止法上の抱き合わせ規制に抵触するとして不法行為による損害賠償請求を認めたものがあります(大阪高裁h5.7.30判決)。機械本体の値段を抑えて、その後のアフターサービスで利益を獲得するというのは、ある意味、商売の基本、とも言え、どこまでが許され、どこからが違法となるのか、なかなか線引きが難しいと感じます。市場シェア率がどの程度で消費者にどのような損害が生じうるのか、技術的に設計変更の必要性がどこまであったのか、など様々考慮したものと思われます。おそらく、今後、上訴審でさらに審理されるものと思われ、注目です。


178. 【入居者死亡事故物件の告知指針公表】21.10.11
(1)さて、末尾に引用しているbcc通信147(21.6.2)でお知らせしていた入居者らが死亡した「事故物件」について不動産業者が告知すべき対象について、 21.10.8、国土交通省が正式に告知指針(ガイドライン)を公表しました(下記URL)

【国交省HPの該当ページ】
https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo16_hh_000001_00029.html


(2)国交省HPに記載の本ガイドラインの概要は次のように書かれています。
【国交省HPから引用】
○ 本ガイドラインは、取引の対象不動産において過去に人の死が生じた場合において、宅地建物取引業者が宅地建物取引業法上負うべき義務の解釈について、 現時点における裁判例や取引実務に照らし、一般的に妥当と考えられるものを整理し、とりまとめたものです。
○ 本ガイドラインにおいては、例えば以下の事項等について整理しており、詳細は別紙1(概要)及び別紙2(ガイドライン)をご確認ください。
・宅地建物取引業者が媒介を行う場合、売主・貸主に対し、過去に生じた人の死について、告知書等に記載を求めることで、通常の情報収集としての調査義務を果たしたものとする。
・取引の対象不動産で発生した自然死・日常生活の中での不慮の死(転倒事故、 誤嚥など)については、原則として告げなくてもよい。
・賃貸借取引の対象不動産・日常生活において通常使用する必要がある集合住宅の共用部分で発生した自然死・日常生活の中での不慮の死以外の死が発生し、事案発生から概ね3年が経過した後は、原則として告げなくてもよい。
・人の死の発生から経過した期間や死因に関わらず、買主・借主から事案の有無について問われた場合や、社会的影響の大きさから買主・借主において把握しておくべき特段の事情があると認識した場合等は告げる必要がある。

(3)本ガイドラインと民事上の責任との関係についてガイドラインには次の記載があります。
【ガイドラインからの抜粋】
個々の不動産取引において、人の死の告知に関し紛争が生じた場合の民事上の責任については、取引当事者からの依頼内容、締結される契約の内容等によって個別に判断されるべきものであり、宅地建物取引業者が本ガイドラインに基づく対応を行った場合であっても、当該宅地建物取引業者が民事上の責任を回避できるものではないことに留意する必要がある。
しかしながら、宅地建物取引業者が、一般的な基準として本ガイドラインを参照し、適切に対応することを通じて、不動産取引に際し、当該不動産において過去に生じた人の死に関する事案について、買主・借主が十分な情報を得た上で契約できるようにすることにより、取引当事者間のトラブルの未然防止とともに、取引に関与する宅地建物取引業者との間のトラブルの未然防止が期待される。


179. 【特許権侵害訴訟の審理モデル】21.10.18
さて、日本製鉄が、本年10月14日、電気自動車(EV)のモーターなどに使う電磁鋼板の特許を侵害したとして、トヨタ自動車と中国宝武鋼鉄集団の子会社、宝山鋼鉄を東京地裁に提訴した、ということが大きな話題になっています。日本製鉄にとってトヨタ自動車は最大の顧客のようですので、極めて異例な訴訟と言えそうです。この訴訟の中身自体については私も新聞報道程度しか知りませんので、今日は、特許権侵害訴訟について裁判所がどのように裁判を進めていくのか、について簡単にご紹介します。

(2)特許権の侵害訴訟は、大きく分けると2つの段階に分けられます。①まずは特許権を侵害したと言えるのか、という段階、②次に、特許権を侵害したということが言えた場合、損害の金額を算定する段階、です。

(3)①侵害したという言えるためには、そもそも特許権が有効なのか無効なのか(無効となるのは、その特許が成立する前にすでに同じようなものが公表されていて新規性・進歩性がない場合などが典型)、と、仮に有効であったとしても被告の商品や技術などが、当該特許権の特許発明の技術的範囲に属し(構成要件を満たし)、侵害していると言えるのか、が問題となります。

(4)①でそもそも特許権が無効だ、とか、技術的範囲に属しない、ということでれば、②の損害の金額の算定まで進む必要はないので、その点の審理に進まず判決などに向かいます。①で侵害だということになってはじめて、②について進んでいくことになります。

(5)この点についての大阪地方裁判所知的財産専門部のHPが下記です。このあたりの情報が記載されています。

【大阪地裁知的財産専門部のHP】
https://www.courts.go.jp/osaka/saiban/tetuzuki_ip/index.html

【同HPに掲載されいている審理モデル】→侵害論と損害論の審理に分かれている

https://www.courts.go.jp/osaka/vc-files/osaka/file/sinrimoderu2013331.pdf



180. 【公益通報者保護法の指針解説】21.10.25
さて、最近の企業不祥事発覚の多くのケースが、内部通報によるものである、と言われています。また、セクハラやパワハラなどへの対策として、適切な通報窓口を設置して運営することは、企業にとって極めて重要な課題です。

(2)この点、下記のbcc通信168(21.8.23)でご紹介した消費者庁の公益通報者保護法の指針について、同庁が21.10.13、「指針の解説」を公表しました。来年の改正法施行に向けて、各企業ともによく検討する必要がある解説です。下記、消費者庁のHPです。

https://www.caa.go.jp/notice/entry/026034/

【bcc通信168】(21.8.23)
さて、21.8.20、消費者庁が、「公益通報者保護法第11条第1項及び第2項の規定に基づき事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針」を公表しました。21.4.26のbcc通信136で指針案が公表されたことをお知らせしていましたが、パブコメを経てほぼ同内容の指針となっているようです。パブコメに対する回答は60頁以上になっており、関心の高さがうかがえます。今後はこの指針の解説が公表されることになりますが、消費者庁のHPの書きぶりからすると、どうやら施行日も22年6月1日になりそうですので、そろそろ本腰を入れて準備をしていく必要がありそうです。
【指針】
https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_research_cms210_20210819_02.pdf

【指針を公表した消費者庁のHP→パブコメ等】
https://www.caa.go.jp/notice/entry/025264/

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