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コラム詳細

2021年11月16日
会社法関係     労働関係     知的財産権関係
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その他

弁護士 : 久保井 聡明

久保井L⇔O通信21.8.2-8.30(SDGsイベント,スーパー店内転倒事故2つの判決,中小企業所在不明株主の会社法特例,有期雇用5年ルール厚労省調査,米ナスダック取締役多様性規則,消費者庁が公益通報者保護法の指針,金魚電話ボックス著作権事件最高裁上告不受理)

163. 【大阪弁護士会のSDGsイベント】21.8.2
本年4月1日に大阪弁護士会副会長に就任して早くも4ヵ月が過ぎました。3分の1で
すね。光陰矢のごとし、です。

副会長は7人いるため、色々担当を決めて会務を進めていますが、私の担当の一つに広報があります。就任するにあたって色々考えたのですが、最近注目されているSDGsを基軸にして弁護士会の活動を情報発信しては、と考えました。その取組みの一つとして、下記のイベントをZoomウェビナーで企画しました。当日は、SDGsと憲法の基本的人権の共通性、貧困問題、公害環境問題、ビジネスと人権に関する弁護士会の活動をご紹介する予定です。

一般の方向けのイベントですので、是非是非、お申し込み頂きご参加頂ければ嬉しいです。また、ご家族や同じ会社の方にも転送して周知頂ければありがたく思います。よろしくお願いします。

★【大阪弁護士会HP→イベント告知・申込みページ】 ★終了しています
https://www.osakaben.or.jp/event/2021/2021_0904.php

日 時 2021年(令和3年)9月4日(土)午後1時~4時
会 場 オンラインにて開催(Zoomを使用します)
概 要 
SDGsの理念「誰ひとり取り残さない(No one will be left behind)」。そして、掲げられている17の目標。これらは憲法が掲げる基本的人権の理念と共通しているところがあるように見えないでしょうか。わたしたち弁護士・弁護士会はこれまでも憲法のこと、基本的人権のこと、そのあり方を考えてきました。「憲法×SDGs」。これってもしかするとSDGs?少しみなさんで考えてみませんか。
「誰ひとり取り残さないあらゆるひとに弁護士の力を」
今年度、大阪弁護士会が掲げるスローガンです。

 

164. 【中小企業所在不明株主の会社法特例】21.8.4
さて、中小企業の事業承継を考えるにあたって一部の株主の所在が分からないためM&Aが進まない、というようなことがあります。

(2)この点、現行の会社法上の手続(会社法第197条及び第198条)では、所在不明株主の株式の競売及び売却の際に、所在不明株主に対して行う通知等が5年以上継続して到達せず、当該所在不明株主が継続して5年間剰余金の配当を受領しないことを要するため、M&Aを含む事業承継にあたり当該手続の利用が事実上困難となるケースがみられました。

(3)この度、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」において、事業承継税制、遺留分に関する民法の特例、金融支援に次ぐ4つ目の支援措置として、所在不明株主に関する会社法の特例(条文上は「所在不明株主の株式の競売及び売却に関する特例」)が創設されました。

(4)会社法特例は、認定を受けた場合に当該「5年」という期間を「1年」に短縮することで、中小企業者の事業承継における所在不明株主問題の解決を後押しするものです。下記、中小企業庁のパンフレットがわかりやすいです。
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/shoukei_enkatsu/kaisha-hou_pamphlet.pdf

 

165. 【スーパー店内転倒事故2つの判決】21.8.11
(1)さて、店舗などを経営されている方から、「お店の中でお客さんが転送してお怪我をされたんですが、当社に責任があるのでしょうか。どの程度の賠償をすればよいのでしょうか。」というご相談を受けることがあります。そういう相談の場合、どのような状況でお客さんが転倒されたのか、転倒の原因はどのようなものであったか、そのような状況が通常予想できるようなものであったのか、転倒防止の措置を事前に取っていたのかなどをお聞きしていくことになります。ただ、なかなか微妙なケースもあって、多くは裁判にまで至らず、お客さんとの間で話合いをして治療費や一定の慰謝料をお支払いする、可能な限り店舗損害賠償保険などを活用するということで解決されているように思います。

(2)この点、最近、スーパーマーケットの中での転倒事故について、お店の責任を否定したケースと、肯定したケースの対照的な判決が報道されていました。結局は、上記(1)にあるような事情を勘案してお店に過失があったのかどうかを判定するため、個別事案毎の判断、ということです。

【責任を肯定した判決】東京地裁2021.7.28判決(Jiji.com7.28配信より)
 小田原百貨店(神奈川県小田原市)が経営するスーパー店内で左肘を骨折して入通院して手術を受けた63歳の男性が、床が水浸しで放置されていたのが転倒の原因だとして約1億2000万円の損害賠償を求めて訴訟を提起したようです。これに対して、判決では、サニーレタスに付いた水が垂れて床がぬれていたのに、清掃などの対応をした形跡がうかがえず、「安全管理義務に違反した」と判断し、企業経営者の男性が負傷で休業せざるを得なかった点や、左肘関節に後遺障害が残ったことなどを考慮して、2180万円の賠償責任を認めた、ということです。


【責任を否定した判決の報道】東京高裁2021.8.4判決(朝日新聞デジタル8.5配信より)
上記報道によると、2020年12月の一審判決では、「店内の転倒事故の約2割が野菜くずなど落下物が原因とする消費者庁の調査をふまえ、『事故は異例ではない。総菜を床に落とすことは容易に予想できた』と店の賠償責任を認めていたようです。これに対する控訴審判決で、東京高裁は、8月4日、「店側に特段の措置をとる法的義務があったとは認められない」と指摘し、店側の逆転勝訴判決を言い渡したようです。報道によると、「総菜売り場は落下物が多い可能性があるものの、レジ付近通路に商品が落ちるのは『通常想定しがたい』と言及。さらにレジ付近の通路は見通しがよく、『混んでいても客が落下物を避けることは困難ではない』と結論付けた」とあります。

(3)私も上記(2)の【責任を否定した判決の報道】を見て、「消費者庁がそんな調査してたのか」、と検索してみたところ、下記にあたりました。お店の安全対策を考えるにあたって一つの参考になりそうです。
【消費者庁のHPから】
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_007/

 

166. 【有期雇用5年ルール(無期転換権)行使状況厚労省調査結果】21.8.17
(1)さて、少し前になりますが、21.7.29の朝日新聞が、「1年などの有期で雇われた社員が、契約更新を重ねて通算5年を超えたら定年までの無期雇用に転換できる「5年ルール」。その権利を2018~19年度に得た人のうち、実際に使った人は約3割だったことが28日、厚生労働省の初の調査でわかった。有期雇用社員の約4割がルールを知らない実態も明らかになった。」と報道していました。
【朝日新聞デジタルの記事】
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14991905.html

(2)上記(1)の「5年ルール」を定めた労働契約法の条文は下記です。

(有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換)
第十八条 同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約…の契約期間を通算した期間…が五年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。この場合において、当該申込みに係る期間の定めのない労働契約の内容である労働条件は、現に締結している有期労働契約の内容である労働条件(契約期間を除く。)と同一の労働条件(当該労働条件(契約期間を除く。)について別段の定めがある部分を除く。)とする。

(3)厚生労働省の調査概要は下記のURLです。
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/000817482.pdf

概要といっても100ページを超える大部なものですので、報道に関係する部分や興味深い部分のページを指摘しておきます。(パワーポイントの右下のページ番号です)。業種によって大きく傾向が異なるようですが、今後の制度運用を考えるにあたってとても参考になりそうです。
・無期転換申込権が生じた人のうち権利行使した人としなかった人の割合…19p
・業種別で無期転換申込権を行使した人の割合…21p
・無期転換申込権行使後の意識の変化、満足度…26~27p
・無期転換申込権の説明を受けたかどうか…28~30p
・無期転換申込権を知っていたかどうか(知らないが約4割)…31p
・有期契約の方で将来的に無期転換を希望するかどうか…35p
・有期契約の上限設定の有無…41~45p
・無期転換への企業の対応…48~49p
・有期雇用のトラブルの状況…51p
・いわゆるクーリング期間設定の有無…54p
・無期転換者の転換後の労働条件の状況55~63p
・無期転換社員と正社員の処遇の比較…64~68p

 

167. 【米ナスダック取締役多様性の規則承認】21.8.19
さて、少し前の報道によると、21.8.6、証券取引所を運営する米ナスダックの上場企業に対して取締役の多様性を求める規則が米当局に承認された、とのことです。規則では、多様な取締役を少なくとも2人登用し、1人は女性で、もう1人は人種や性的マイノリティーにし、規則に従わない場合、企業に理由の説明を求める、とのことです。

(2)21.6に改訂された東京証券取引所のコーポレートガバナンスコードでも次の原則が入っていますが、米ナスダックはその一歩先を進んでいる、という感じですね。

【原則4-11.取締役会・監査役会の実効性確保のための前提条件】
取締役会は、その役割・責務を実効的に果たすための知識・経験・能力を全体としてバランス良く備え、ジェンダーや国際性、職歴、年齢の面を含む多様性と適 正規模を両立させる形で構成されるべきである。また、監査役には、適切な経験・能力及び必要な財務・会計・法務に関する知識を有する者が選任されるべきであり、特に、財務・会計に関する十分な知見を有している者が1名以上選任されるべきである。取締役会は、取締役会全体としての実効性に関する分析・評価を行うことなどにより、その機能の向上を図るべきである。

 

168. 【消費者庁が公益通報者保護法の指針を公表】21.8.23
さて、21.8.20、消費者庁が、「公益通報者保護法第11条第1項及び第2項の規定に基づき事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針」を公表しました。21.4.26のbcc通信136で指針案が公表されたことをお知らせしていましたが、パブコメを経てほぼ同内容の指針となっているようです。パブコメに対する回答は60頁以上になっており、関心の高さがうかがえます。今後はこの指針の解説が公表されることになりますが、消費者庁のHPの書きぶりからすると、どうやら施行日も22年6月1日になりそうですので、そろそろ本腰を入れて準備をしていく必要がありそうです。

【指針】
https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_research_cms210_20210819_02.pdf

【指針を公表した消費者庁のHP→パブコメ等】
https://www.caa.go.jp/notice/entry/025264/

 

169. 【金魚電話ボックス著作権事件最高裁上告不受理】21.8.30
さて、21.1.25bcc通信95でお知らせしていた金魚電話ボックス著作権侵害事件、最高裁が21.8.25付けで上告不受理決定を行ったと報道されていました。これによって、著作権侵害と認め、商店街に55万円の支払いとオブジェの廃棄を命じた二審大阪高裁判決が確定しました。

【bcc通信95の内容】
さて、今日の報道によると、大阪高裁は、昨日(21.1.14)、「金魚電話ボックス」は著作権侵害にあたるとして、制作の商店街側に賠償命じる逆転判決を下した、とのことです。(下記、朝日新聞の記事)
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14763825.html

1審の奈良地裁令和元年7月11日判決は、「著作権法は、思想又は感情の創作的な表現を保護するものであり、既存の著作物に依拠して作成、創作された著作物が、思想、感情若しくはアイディア、事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には、著作物の複製には当たらないものと解される。」として、著作権侵害を否定していました。

今回の大阪高裁は、(まだ判決文を見ていないので報道ベースですが)、「受話器から気泡を出す表現について、音声を通すための受話器に空気を通し、気泡を出すことによって通話を想起させる表現は創作性があり、作品全体が著作物と認められると判断した」(朝日新聞1.15朝刊)、ということのようです。

著作権法上の著作物の定義は下記のとおりですが、「創作的に表現したもの」である必要があり、思想、感情、もしくはアイディアで表現それ自体でないと保護の対象となりません。

なかなか微妙な判断ですね。

【著作権法】
2条(定義)
1 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

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