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2021年09月15日
会社法関係     保険関係     環境法・SDGs関係
一般民事関係     個人情報関係

弁護士 : 久保井 聡明

久保井L⇔O通信21.7.1-7.13(株主総会脱炭素化,生保契約照会制度,監査等委員の意に反する株主提案,大規模災害と個人情報,繊維産業サスティナビリティ)

154. 【株主総会で脱炭素の流れ】21.7.1
さて、今年も株主総会のシーズンが終わりました。「事実は小説よりも奇なり」の東芝などが注目されていましたが、今年は、日本だけではなく世界的に、「株主総会が投資家や環境団体が企業に脱炭素を迫る舞台となりつつある」(2021.6.29日経新聞)、という印象でした。

たとえば、三菱UFJフィナンシャル・グループの招集通知(末尾のURL)を見ても、「定款の一部変更の件パリ協定の目標に沿った投融資を行うための経営戦略を記載した計画の策定・開示」などの株主提案がされています。

これに対する取締役会の意見は、「本議案に反対します」とありますが、その理由を見ると、「今回決定・公表したMUFGカーボンニュートラル宣言に則り、今後、パリ協定目標に沿った投融資を行うための指標と目標、経営戦略を具体化し、実行してまいります。また、定款は会社を運営する上での基本的な方針を定 めるものであり、個別具体的な業務執行に関する事項を規定することは適切ではないと考えております。従って、定款に本議案のような規定を設ける必要はないと考えます。」とあります。

この株主提案は否決されたようですが20%以上の賛同を集めたようです。また、取締役会の反対理由を見ても、今後の経営は脱炭素を意識し、実際に行動に移していかなければ立ちゆかない時代が来ている、と感じます。


https://resource.ufocatch.com/pdf/ot/OT2021053100153



155. 【生命保険協会の契約照会制度スタート】21.7.2
さて、bcc40(20.9.23)でお伝えしていた生命保険協会の契約照会制度が開始したと、朝日新聞の2021.7.1の記事で紹介されていました。記事を少し引用しますと、「照会1回3千円家族の契約の有無がわからない際、これまでは保険各社へ個別に問い合わせる必要があった。新制度を使えば、生保協会が加盟全42社に一括して契約を確認する。本人死亡時の問い合わせの場合、契約があれば保険金を請求可能かどうかも確かめられる。実際に請求する際などは利用者が保険会社に直接手続きする。」とのことです。★生保協会発表の詳細資料は下記のURLです。今後は、弁護士実務でもこの制度の利用は必須になってきそうです。


https://www.seiho.or.jp/info/news/2021/pdf/20210611_1.pdf


(2)また、同じ日の朝日新聞では、他の資産はどうなの?ということを丁寧に書いてくれています。これも銀行預金は個々の金融機関に問い合わせするしかないのが現状ですが、これまた引用しますと、「株や上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(REIT)の口座がある証券会社や信託銀行がどこか、保有者以外でも問い合わせられる。窓口は証券保管振替機構(通称ほふり)。成年後見人ら法定代理人、相続人などが本人確認書類などを添えて書面で申請する。」と紹介されています。★証券保管振替機構の説明ページは下記のURLです。これも重要ですね。


http://www.jasdec.com/system/less/certificate/kaiji/chokusetu/index.html



156. 【監査等委員の意に反する株主提案】21.7.6
さて、プラスチック製品メーカーの天馬(東証1部上場)が6月29日に東京都内で開いた定時株主総会で、「物言う株主」が行った株主提案(取締役会の監督にあたる「監査等委員」に就いている社外取締役の交代を求めるもの)が可決され、監査等委員が自らの取締役再任を求める議案が否決された、ということが話題になっています。

この点、監査等委員会設置会社においては、監査等委員の独立性を担保するため、取締役が監査等委員である取締役の選任議案を総会に提出するについては、監査等委員会に、議案への同意権(拒否権)及び選任議題・議案の提案権があり(会社法344条の2)、かつ、総会においては、監査等委員である取締役は、その選任(不再任)につき意見陳述権を有します(同342条の2第1項)。

ところが、株主提案には上記のような規制は定められていません。ややこしいのは、この天馬では、2020年春、ベトナムにある天馬の子会社が現地の公務員に2500万円相当の現金を渡した疑惑が発覚、監査等委員会は同年12月、当時の取締役に賠償を求めて提訴しており、この責任追及をめぐって、監査等委員会と他の取締役が対立していた、という事情があるためです。

責任追及をされた取締役側と「物言う株主」の間で何かなかったのか(?)、分かりませんが、いずれにしろ、今回、監査等委員の社外取締役が意に反して交代を余儀なくされたことで、経営陣と対立してでもチェック機能を果たせるのか課題が残った、と報道されています(朝日新聞2021.6.30朝刊)。

滅多にない事例ではありますが、これまであまり意識されていなかった問題のように思います。



157. 【大規模災害時の個人情報】21.7.9
さて、熱海の大雨による土石流発生で大きな被害が生じています。最近、あまりにも自然災害が多すぎて1年前の大きな災害も思い出せないほどです。

この点、日経新聞(21.7.7)では、「静岡県熱海市で発生した土石流で、安否が確認できない住民の数を巡り一時混乱が生じた。市は3日の発生直後、安否不明者を20人程度としたが、4日には一転して「所在不明者」147人と発表。5日夜に氏名公表に踏み切ると、6日時点で27人に減った。効果的な救出活動には不明者の状況把握が欠かせない。専門家は「速やかな氏名公表が必要だ」と指摘する。」と報道されています。

今回の熱海の場合、別荘も多いということで、住民票が熱海市にないけれども、建物の所有者ではある、という方が多かったという事情もありそうです。氏名公表により大幅に所在不明者が減っており、やむを得ない措置であったように思われます。ただ、実際にはケースバイケースで、各自治体が各々の個人情報保護条例に基づいて悩みながら判断している、というのが実状のようです。下記のURLは全国知事会の「災害時の死者・行方不明者の氏名等公表に係るガイドライン(案)」ですが、公表のメリットとデメリットなどが書かれていて自治体の難しい立場が伝わってきます。


http://www.nga.gr.jp/ikkrwebBrowse/material/files/group/2/2021052707_shiryo4.pdf



158. 【繊維産業のサスティナビリティ】21.7.13
さて、日経新聞の報道(21.7.11)によると、「繊維産業のサプライチェーン (供給網)から強制労働など人権侵害のリスクを排除するために官民が連携する。経済産業省と日本繊維産業連盟(繊産連)は綿などの調達先で不当賃金や児童労働などの問題がないか企業が確認する指針をつくる。」とのことです。

その基礎となる「繊維産業のサステナビリティに関する検討会」報告書を昨日 (21.7.12)、経産省がHPで公表しました。


【経産省のHP】
https://www.meti.go.jp/press/2021/07/20210712002/2021070912002.html
【報告書概要】
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/textile_industry/pdf/20210712_2.pdf


下記が報告書の章立てです。環境配慮、サプライチェーン管理が入っているのは当然として、ジェンダー平等やデジタル化促進も大きな柱の中に入っています。SDGsへの取組みが企業にとって不可欠な時代となってきました。

【環境配慮】
①環境配慮設計ガイドラインの策定
②回収システムの構築
③消費者の意識改革
【責任あるサプライチェーン管理】
①デュー・ディリジェンスの実施
②国際認証取得に向けた環境整備
③外国人技能実習生等への対応
【ジェンダー平等】
①官民ラウンドテーブルの設置
②若い世代に対するロールモデルの提示
【供給構造】
①デジタル技術の活用
②顧客を中心に置いた事業展開の推進
③生産工程の改革
【デジタル化の促進】
①経営層への理解促進
②優良事例の横展開
③支援施策の周知

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