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2020年11月02日
労働関係

弁護士 : 久保井 聡明

久保井L⇔O通信20.10.12-10.16(まるごと1週間・同一労働同一賃金最高裁判決関係)

52. 【同一労働同一賃金→大阪医科薬科大学大阪高裁判決】20.10.12
さて、9月16日の【通信37】で配信していましたように、10月13日(火)、大阪医科薬科大学の有期契約労働者(アルバイト職員)が、無期契約労働者(正職員)に支給される賞与と私傷病による欠勤中の賃金及び休職給が支給されないのは、いわゆる同一労働同一賃金を定めた労働契約法20条(改正前)によって不合理である、と訴えた事件の最高裁判決が言い渡されます。

また、これも【通信37】で配信しましたように、同じ10月13日、東京メトロコマースの地下鉄の駅構内の売店で、有期労働契約を締結して販売業務に従事していた方々が、正社員にのみ退職金支給がされているのは不合理である、として訴えた事件の最高裁判決も言い渡されます。

この2つの最高裁判決の結論は、判決の翌日の10月14日に配信する予定ですが、その前に、今日(10月12日)は、大阪医科薬科大学に関する平成31年2月15日大阪高裁判決の概要を、明日(10月13日)は、東京メトロコマースに関する平成31年2月20日東京高裁判決の概要をご紹介しておきます。

【事案概要】
1 大阪医科薬科大学(被告大学)と有期労働契約を締結して勤務していた時給制のアルバイト職員(原告)が、無期労働契約を締結している正職員には、賞与や私傷病欠勤中の賃金・休職給が支給されるのに、自らには支給されないのは、労働契約法20条(改正前)に違反するもので、被告大学に対して不法行為に基づき、上記相違に関する賃金に相当する額などの損害賠償を求める事案
2 より具体的には、原告は、平成25年1月にアルバイトとして被告大学に採用され、同年4月から期間を1年として契約を更新し、28年3月末まで在籍していた。原告の業務は教室事務員(診療科を持たない基礎系の教室に配属されて教授や教員のスケジュール管理・郵便物の仕分け等の事務を担当)であり、時給制であったが、ほぼフルタイム勤務をしていたため勤務時間数は正職員と大差がなかった。
3 最も大きな争点である賞与の支給について、同じ有期労働契約者のうちでも「契約職員」には正社員に対する賞与の約80%に当たる額の賞与が支給されていた。

【労働契約法20条(改正前)】→2020.4.1にパート・有期雇用労働法8条に移行
「有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない」

【問題となった待遇格差と大阪高裁結論】
 大阪高裁判決は、労働条件を比較するのは、正職員全体であるとしたうえで(ただし、原告と同時期に新規採用された正職員)、次のとおり判断しています。
1 賃金(基本給)
①時給制と月給制の違い、②時給950円と初任給19万2570円の違い(賃金水準格差は約20%)はいずれも不合理ではないとの判断
2 賞与(★最高裁で判断対象)
原告と同時期に採用された正職員の支給基準の60%を下回る支給しかしない場合には不合理な相違である、との判断(同じ有期労働契約者の契約職員に80%支給していることを考慮)
3 年末年始や創立記念日の休日の賃金を正職員のみに支給
  不合理ではないとの判断
4 年休の日数が1日異なる点
  不合理ではないとの判断
5 夏期特別有給休暇5日間を正職員のみに与えていること
  少なくともフルタイム勤務アルバイト職員に与えないのは不合理との判断
6 私傷病による欠勤中の賃金及び休職給(★最高裁で判断対象)
  正職員には私傷病欠勤の場合6ヶ月全額賃金が支給され、6ヶ月経過後は休職が命ぜられた上で休職給として標準賃金の2割が支払われるとされているのに対し、アルバイト職員にそのような制度がないことについて、フルタイム勤務で契約期間を更新しているアルバイト職員については、私傷病による賃金支給について1ヶ月分、休職給の支給について2ヶ月分を下回る支給しかしないときは不合理との判断
7 附属病院の医療費補助措置が正職員にのみあること
  そもそも恩恵的なものであり労働条件とは言えず差違があっても問題ない

【最高裁で判断される対象】
 最高裁のHPを見ると、最高裁は上記のうち★を付けた「2 賞与」と「6 私傷病による欠勤中の賃金及び休職給」についてのみ判断するようです。
その他の論点については、大阪高裁の判断を是認した、ということで、「5 夏期特別有給休暇5日間を正職員のみに与えていること」が不合理である、との判断は確定しているようです。

53. 【同一労働同一賃金→東京メトロコマース高裁判決】20.10.13
今日は、昨日の配信で予告したように、東京メトロコマースの東京高裁平成31年2月20日判決の概要をご紹介します。今日の午後、朝のニュースでもやっていましたように,最高裁の判決言い渡されます。

【事案概要】
1 (株)メトロコマースと有期労働契約を締結して東京メトロ(地下鉄)の駅構内の売店における販売業務に従事していたB種契約社員ら(原告ら)が、無期労働契約を締結している同社の従業員(正社員)と同一内容の業務に従事しているにもかかわらず、退職金などの労働条件において正社員と差違があることが労働契約法20条に違反する、と主張して、差額相当額の損害賠償を請求している事件
2 最も大きな争点である退職金の支給について、同じ有期労働契約者のうちでもA種契約職員には退職金制度が設けられていた。

【問題となった待遇格差と東京高裁結論】
 東京高裁判決は、比較対象者の範囲について、原告らが正社員全体ではなく、売店業務に従事している正社員に限定しているのであるから、これに沿って労働条件の相違が不合理と認められるか否か判断する、として次のとおり判断しました。
1 本給
  B種契約社員は職務内容及び変更範囲に関しては売店業務以外の業務への配置転換の可能性はないという相違が認められ、原告らの本給が72.6~74.7%と一概に低いとはいえず、B種契約社員には正社員と異なり、皆勤手当及び早番手当が支給され、各登用制度を利用することによって賃金の相違を解消することができる機会も与えられているなどを指摘し、不合理ではない、と判断した。
2 資格手当
  正社員の職務グループ(マネージャー職、リーダー職及びスタッフ職)における各資格に応じて支給されるものであり、不合理ではない、と判断した。
3 住宅手当
  売店業務に従事している正社員だけが、実際に住宅費を負担しているか否かを問わず、扶養家族の有無によって異なる額の住宅手当を支給されていること等から、福利厚生及び生活保障の趣旨で支給されるものであり、被告会社では正社員であっても転居を必然的に伴う配置転換は想定されていない、としてB種契約社員に支給されないことは不合理である、と判断した。
4 賞与
  売店業務に従事している正社員には、毎年夏と冬に、5年間の平均支給実績としては本給の2ヶ月分に17万6000円を加算した額の賞与が支給されたのに対し、B種契約社員は毎年夏と冬に各12万円の賞与が支給されていたところ、その相違が直ちに不合理とは評価できない、と判断した。
5 退職金(★最高裁で判断対象)
  売店業務に従事している正社員には、勤続年数等に応じて退職金規程に基づく退職金が支給されているのに対し、B種契約社員には退職金制度がないところ、原告らのなかには定年まで10年前後の長期間にわたって勤務していたものがいること、同じ有期雇用のA種契約社員には退職金制度が設けられていたことを指摘し、少なくとも長年の勤務に対する功労報償の性格を有する部分に掛かる退職金(正社員退職金の少なくとも4分の1はこれに相当)すら一切支給しないことについては不合理と言わざるを得ない、と判断
6 褒賞
  売店業務に従事している正社員には勤続10年に3万円が、定年退職時に5万円相当の記念品があるが、B種契約社員には一切支給されないことについて、不合理と判断した。
7 早出残業手当
  売店業務に従事している正社員は、所定労働時間を超えて労働した場合、初めの2時間が割増率2割7分、それを超えると3割5分であるのに対し、B種契約社員は割増率が一律2割5分であることについて不合理と判断した。

54. 【最高裁→賞与も退職金も格差不合理ではない】20.10.14
(今週は長文ばかりでスミマセン。明日10月15日も同一労働同一賃金の残り3件の最高裁判決がありますので,明日は3件の争点を配信し,判決翌日の16日には判決の概要をお知らせする予定です。)

 さて、ニュースで大きく取り上げられていますように、昨日(20.10.13),最高裁第3小法廷は,同一労働同一賃金を巡る2つの事件について判決を言い渡し、賞与の不支給と退職金の不支給を不合理としていた2件の高裁判決を変更し,「不合理とまで評価することができるものとは言えない」としました。
今回の判決については,経営の裁量を比較的広く認めたものと考えられますが,一方で,時代に逆行しているのでは,との批判もあり得そうです。また,あくまでも具体的ケースにおける事例判断で,両判決とも,賞与や退職金の待遇格差が,労働契約法20条に照らして不合理と認められるものにあたる場合はあり得る,との一般論は述べています。「では,どのような場合に,不合理と認められるのか」についての基準については,言及されておらず,今後の事例の集積が待たれそうです。
判決の詳細は最高裁のHPのURLでご確認頂くとして、ここでは概要をご紹介します。

1 大阪医科薬科大学事件について(下記は最高裁HPのURL)
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/767/089767_hanrei.pdf

【賞与】について
大阪高裁判決は,アルバイト職員(有期労働契約者)と、同時期に採用された正職員(無期労働契約者)の支給基準の60%を下回る支給しかしない場合には不合理な相違である、との判断をしていました。

★これに対し,最高裁は,有期労働契約者と無期労働契約者の間の労働条件の相違が賞与の支給に係るものであったとしても、労働契約法20条の不合理と認められるものに当たる場合はあり得る、と一般論を述べつつ、今回の具体的ケースでは、賞与支給は,正職員としての職務を遂行し得る人材の確保やその定着を図るなどの目的であるとしたうえで,①アルバイト職員であった原告の業務は相当に軽易で、正職員の職務内容(学内の英文学術誌の編集事務等,病理解剖に関する遺族等への対応や部門間の連携を要する業務又は毒劇物等の試薬の管理業務等にも従事)とは一定の相違があったことは否定できないこと(職務の内容)、②正職員は就業規則上、人事異動を命ぜられる可能性があったのに対し、アルバイト職員には、原則として業務命令によって配置転換されることはなかったこと(職務内容や配置の変更)、③アルバイト職員から契約職員及び正職員へ段階的に職種を変更するための試験による登用制度が設けられていたこと(その他の事情)などを指摘し、アルバイト職員に賞与が支給されないことは、不合理とまで評価することができるものとは言えない、と判断しました。
【私傷病による欠勤中の賃金及び休職給について】
  大阪高裁判決は,正職員には私傷病欠勤の場合6ヶ月全額賃金が支給され、6ヶ月経過後は休職が命ぜられた上で休職給として標準賃金の2割が支払われるとされているのに対し、アルバイト職員にそのような制度がないことについて、フルタイム勤務で契約期間を更新しているアルバイト職員については、私傷病による賃金支給について1ヶ月分、休職給の支給について2ヶ月分を下回る支給しかしないときは不合理との判断していました。
  ★この点についても最高裁は、これらの制度は,正職員が長期にわたり継続して就労し,又は将来にわたって継続して就労することが期待されることに照らし,正職員の生活保障を図るとともに,その雇用を維持し確保するという目的であり,アルバイト職員に私傷病による欠勤中の賃金及び休職給が存在しないことは、不合理であると評価することができるものとは言えない、としました。

2 東京メトロコマース事件について(下記は最高裁HPのURL)
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/768/089768_hanrei.pdf

【退職金について】
  東京高裁判決は,売店業務に従事している正社員には、勤続年数等に応じて退職金規程に基づく退職金が支給されているのに対し、契約社員Bには退職金制度がないところ、原告らは定年まで10年前後の長期間にわたって勤務していたものがいること、同じ有期雇用の契約社員Aには退職金制度が設けられていたことを指摘し、少なくとも長年の勤務に対する功労報償の性格を有する部分に掛かる退職金(正社員退職金の少なくとも4分の1はこれに相当)すら一切支給しないことについては不合理と言わざるを得ない、と判断していました。

 ★これに対し,最高裁は,有期労働契約者と無期労働契約者の間の労働条件の相違が退職金の支給に係るものであったとしても、労働契約法20条の不合理と認められるものに当たる場合はあり得る、と一般論を述べつつ、本件の具体的ケースでは、退職金は,職務遂行能力や責任の程度等を踏まえた労務の対価の後払いや継続的な勤務等に対する功労報償等の複合的な性質を有するものであり,正社員としての職務を遂行し得る人材の確保やその定着を図る目的であるとしたうえで,①正社員は契約社員Bが行わない欠勤等の販売員に代わって早番や遅番の業務を行う代務業務を担当していたほか,エリアマネージャー業務に従事することがあるなど職務内容に一定の相違があったことは否定できないこと(職務の内容)、②正社員は業務の必要により配置転換等を命ぜられる現実の可能性があり、正当な理由がなく、これを拒否できなかったこと(職務内容や配置の変更)、③契約社員Bから契約社員A及び正社員へ段階的に職種を変更するための開かれた試験よる登用制度を設けていたこと(その他の事情)などをあげ、不合理とまで評価することができるものとは言えない、と判断しました。

55. 【同一労働同一賃金最高裁→本日の3件の論点】20.10.15
さて、日本郵便(株)との間で有期労働契約を締結していた契約社員らが、期間の定めのない労働契約を締結している正社員と同一内容の業務に従事していながら、様々な手当などで差違があることが労働契約法20条に違反するとして訴えている3つの事件の最高裁判決が、今日(20.10.15)出されます。そこで、最高裁がこの3つの事件で判断を示すことになっている内容をご説明しておきます。 最高裁判決の結論は、明日、配信予定です。

1 【原審】福岡高裁平成30年5月24日判決
  原審判決が、夏期休暇及び冬期休暇の付与の有無に関する労働条件の相違について、労働契約法20条(改正前)にいう不合理と認められるものに当たり、日本郵便にこの休暇の日数分の賃金に相当する額の損害が発生したとして、損害賠償請求を命じた。
【最高裁の判断対象】
→上記の労働条件の相違について不合理と認められるかを最高裁が判断することになる。

2 【原審】東京高裁平成30年12月13日判決
  原審判決が、①年末年始勤務手当の支給の有無、及び、②私傷病による病気休暇を有給とするか無給とするかに関する労働条件の相違について、いずれも労働契約法20条(改正前)にいう不合理と認められるものに当たるとして、損害賠償の一部を認容し、③夏期休暇及び冬期休暇の付与の有無に関する労働条件の相違について、不合理と認められるものに当たるとしたうえで、ただ、原告らにこれによる損害が生じていないと請求を棄却した。
 【最高裁の判断対象】
 →①、②の相違が不合理と認められるかどうかを最高裁が判断することになる。
 →また、③について損害が生じたといえるかどうかを最高裁が判断することになる。

3 【原審】大阪高裁平成31年1月24日判決
  原審判決が、①年末年始勤務手当及び年始期間(祝日を除く1月1日~3日)の勤務に対する祝日給の支給の有無に関する労働条件の相違について、有期労働契約の契約期間を通算した期間が5年を超えていた時期に限り、労働契約法20条(改正前)にいう不合理と認められるものに当たるとして、損害賠償請求の一部を認容し、②扶養手当の支給の有無に関する労働条件の相違について、同条にいう不合理と認められるものと当たらないとして、損害賠償請求を棄却し、③夏期休暇及び冬期休暇の付与の有無に関する労働条件の相違ついて、同条にいう不合理と認められるものに当たることを前提に、原告らに上記の休暇の日数分の賃金に相当する額の損害が発生したとして、損害賠償請求を認容した。
 【最高裁の判断対象】
 →①、②の相違が不合理と認められるか否かを最高裁が判断する
 →③について、損害が発生したといえるかどうかを最高裁が判断する。

56. 【同一労働同一賃金→各種手当の格差不合理との最高裁判決】20.10.16
さて、日本郵便(株)との間で有期労働契約を締結していた契約社員らが、期間の定めのない労働契約を締結している正社員と同一内容の業務に従事していながら、様々な手当などで差違があることが労働契約法20条に違反するとして訴えている3つの事件の最高裁判決が、昨日(20.10.15)出されました。10月13日の賞与や退職金とは違って,今回は多くの手当について、差違が不合理である、との判断を示しました。以下,簡潔に結論をご紹介します。

1 【原審】福岡高裁平成30年5月24日判決
  原審判決が、夏期休暇及び冬期休暇の付与の有無に関する労働条件の相違について、労働契約法20条(改正前)にいう不合理と認められるものに当たり、日本郵便にこの休暇の日数分の賃金に相当する額の損害が発生したとして、損害賠償請求を命じた。

【今回の最高裁の判決】
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/771/089771_hanrei.pdf

→「郵便の業務を担当する正社員に対して夏期冬期休暇が与えられ ているのは,年次有給休暇や病気休暇等とは別に,労働から離れる機会を与えることにより,心身の回復を図るという目的によるものであると解され,夏期冬期休暇の取得の可否や取得し得る日数は上記正社員の勤続期間の長さに応じて定まるものとはされていない。そして,郵便の業務を担当する時給制契約社員は,契約期間が6か月以内とされるなど,繁忙期に限定された短期間の勤務ではなく,業務の繁閑に関わらない勤務が見込まれているのであって,夏期冬期休暇を与える趣旨は,上記時給制契約社員にも妥当するというべきである」、として、両者の間に夏期冬期休暇に係る労働条件の相違があることは,不合理であると評価することができるものといえる、と判断しました。

2 【原審】東京高裁平成30年12月13日判決
  原審判決が、①年末年始勤務手当の支給の有無、及び、②私傷病による病気休暇を有給とするか無給とするかに関する労働条件の相違について、いずれも労働契約法20条(改正前)にいう不合理と認められるものに当たるとして、損害賠償の一部を認容し、③夏期休暇及び冬期休暇の付与の有無に関する労働条件の相違について、不合理と認められるものに当たるとしたうえで、ただ、原告らにこれによる損害が生じていないと請求を棄却した。

 【今回の最高裁の判決】
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/772/089772_hanrei.pdf

 →①年末年始手当について
  「年末年始勤務手当は,郵便の業務を担当する正社員の給与を構成する特殊勤務手当の一つであり,12月29日から翌年1月3日までの間において実際に勤務したときに支給されるものであることからすると,同業務についての最繁忙期であり,多くの労働者が休日として過ごしている上記の期間において, 同業務に従事したことに対し,その勤務の特殊性から基本給に加えて支給される対価としての性質を有するものであるといえる。また,年末年始勤務手当は,正社員が従事した業務の内容やその難度等に関わらず,所定の期間において実際に勤務したこと自体を支給要件とするものであり,その支給金額も,実際に勤務した時期と時間に応じて一律である。上記のような年末年始勤務手当の性質や支給要件及び支給金額に照らせば,これを支給することとした趣旨は,郵便の業務を担当する時給制契約社員にも妥当するものである」、として、両者の間に年末年始勤務手当に係る労働条件の相違があることは,不合理であると評価することができるものといえる、と判断しました。

→②私傷病の病気休暇の有給か無給かの相違
  「私傷病により勤務することができなくなった郵便の業務を担当する正社員に対して有給の病気休暇が与えられているのは,上記正社員が長期にわたり継続して勤務することが期待されることから,その生活保障を図り, 私傷病の療養に専念させることを通じて,その継続的な雇用を確保するという目的によるものと考えられる。このように,継続的な勤務が見込まれる労働者に私傷病による有給の病気休暇を与えるものとすることは,使用者の経営判断として尊重し得るものと解される。もっとも,上記目的に照らせば,郵便の業務を担当する時給制契約社員についても,相応に継続的な勤務が見込まれるのであれば,私傷病による有給の病気休暇を与えることとした趣旨は妥当するというべきである。そして, 第1審被告においては,上記時給制契約社員は,契約期間が6か月以内とされており,第1審原告らのように有期労働契約の更新を繰り返して勤務する者が存するなど,相応に継続的な勤務が見込まれているといえる」として、有給とするか無給とするかにつき労働条件の相違があることは,不合理であると評価することができるものといえる、と判断しました。

 →③夏期冬期休暇を与えられなかったことにより損害が発生したか
「夏期冬期休暇を与えられなかったことにより,当該所定の日数につき,本来する必要のなかった勤務をせざるを得なかったものといえるから,上記勤務をしたことによる財産的損害を受けたものということができる」、と判断しました。

3 【原審】大阪高裁平成31年1月24日判決
  原審判決が、①年末年始勤務手当及び、②年始期間(祝日を除く1月1日~3日)の勤務に対する祝日給の支給の有無に関する労働条件の相違について、有期労働契約の契約期間を通算した期間が5年を超えていた時期に限り、労働契約法20条(改正前)にいう不合理と認められるものに当たるとして、損害賠償請求の一部を認容し、③扶養手当の支給の有無に関する労働条件の相違について、同条にいう不合理と認められるものと当たらないとして、損害賠償請求を棄却し、④夏期休暇及び冬期休暇の付与の有無に関する労働条件の相違ついて、同条にいう不合理と認められるものに当たることを前提に、原告らに上記の休暇の日数分の賃金に相当する額の損害が発生したとして、損害賠償請求を認容した。

 【今回の最高裁の判決】
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/773/089773_hanrei.pdf

 →①年末年始勤務手当について
   上記2①と同様に、両者の間に年末年始勤務手当に係る労働条件の相違があることは,不合理であると評価することができるものといえる、と判断しました。
②年始期間の勤務に対する祝日給について
   「祝日給は,祝日のほか,年始期間の勤務に対しても支給されるものである。年始期間については,郵便の業務を担当する正社員に対して特別休暇が与えられており,これは,多くの労働者にとって年始期間が休日とされているという慣行に沿った休暇を設けるという目的によるものであると解される」、として、上記祝日給を正社員に支給する一方で本件契約社員にはこれに対応する祝日割増賃金を支給しないという労働条件の相違があることは, 不合理であると評価することができる、と判断しました。

→③扶養手当について
「郵便の業務を担当する正社員に対して扶養手当が支給されているのは,上記正社員が長期にわたり継続して勤務することが期待されることから,その生活保障や福利厚生を図り,扶養親族のある者の生活設計等を容易にさせることを通じて,その継続的な雇用を確保するという目的によるものと考えられる。…上記目的に照らせば,本件契約社員についても,扶養親族があり,かつ,相応に継続的な勤務が見込まれるのであれば,扶養手当を支給することとした趣旨は妥当するというべきである」、として、両者の間に扶養手当に係る労働条件の相違があることは,不合理であると評価することができる、と判断しました。
→④夏期冬期休暇を与えられなかったことにより損害が発生したか
上記2③と同様に、上記勤務をしたことによる財産的損害を受けたものということができる、と判断しました。

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